あなたの訃報を愛媛新聞の朝刊で知りました。
あなたの穏やかな口調で語られる取材にもとづいたお話はいつも説得力がありました。
あなたの書かれた・・・
『南海僻偶(なんかいへきぐう)の痴蛙(ちあ)なれど』を初めて読んだとき。
これは僕が創らなければいけない物語だと思いました。
浦和盛三郎という明治人がいたという事実。
南予人のプライドと世界を見据えていた偉人が由良半島にいたという事。
「私は、南の果てに住む井の中の蛙のような馬鹿だが、そんな私にも民主主義のなんたるかはわかる・・」という
第一回愛媛県議会の浦和の名演説。
それを聞いて感動した正岡子規と柳原極堂少年。
それを全部、教えてくれたのはあなたでした。
ラジオドラマにしたいと言った時、あなたが嬉しそうに頷いてくださったこと。
制作をしている過程で突然、浦和盛三郎の孫娘さんから届けられた100万円の現金。
「これで、ドラマを作り上げてください」と達筆のお手紙。
勿論。お返しして、南海放送の仕事ですから任せてくださいと申し上げたこと・・・
懐かしいエピソードばかり思い出されます。
犬伏先生。
ありがとうございました。
雨の火曜日に…あなたを思います。
犬伏武彦さん 古建築研究家 今月10日死去(75歳)
大阪府出身。大阪工業大学工学部建築学科卒業。
松山工業高校、東予工業高校の教諭をしながら、愛媛県内各地の民家・古建築を調査研究。
2002年から松山東雲短期大学特任教授を10年間務める。
四国最大級の茅葺き木造民家「土居家」(西予市野村町)、江戸期の俳人・栗田樗堂が建てた「庚申庵」(松山市)の
修復に取り組む。
また、道後温泉本館保存修復計画検討委員会の会長を務める。
(写真は南海放送ニュースより)
朗読ラジオ劇『我、南海僻偶の痴蛙、なれど~岬に立つ少年・浦和盛三郎伝~』
2010年制作。日本放送文化大賞参加作品。