「坂の上のラジオ」生放送で毎月お邪魔している、松山市一番町の「坂の上の雲ミュージアム」。そこで毎年行われる秋山真之祭で、あの”壌晴彦さん”が朗読を披露されると聞いて行ってきました!
壌さん、といえば映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のバルボッサ役の吹き替えで有名な渋~いお声が魅力の声優さん。イベントPRの声も渋すぎる~。ということで始まる前から期待が高まります。
イベントでは、学芸員さんが秋山真之の足跡について30分ほどの講演をされた後、いよいよ壌さん登場。と、ここで会場の扉が閉じられます。それまでは、オープンなスペースで、司会者も学芸員さんもマイクを使って話していたのですが、なんと!壌さんは、手ぶらで登場。そう、マイク無しの生声での朗読だったのです。しかも1時間にわたる、たった一人での朗読・・・
恥ずかしながらラジオの朗読番組で先日40分ほどの収録をしたところ、途中で飲み物でのどを湿らせたり一旦止めたりしながらにも関わらずヘトヘトになってしまった私にとって、水分もまったく取らずに専門用語の多い小説「坂の上の雲」を一時間読み続けるなんて信じられないほどタフな職人技!しかも、あの魅力的な低音の響きは全く変わらないのです。これぞ一流の仕事!力強い司馬先生の文章が、壌さんの声にのることによって更なる見えざる力が加えられたように感じました。素晴らしい・・・
朗読に続いて「日本語の美しさ」をテーマにお話しされた壌さん。愛を語るのに適した言葉はフランス語、祈りに適した言葉はイタリア語、詩に適した言葉はドイツ語、では日本語は何に適していると思いますか?との問いに「説教???」などと意味不明なことを考えていた私。果たして、その答えは?「敬うのに適した言葉」(という説がある、という御紹介でした。)ここで「う~ん」と唸ってしまいました。赤穂浪士や平家物語のように、日本人は敗れた者を称える文化がある。報われなかった人にも敬意を抱く心があるというのです。日本語は「他者を敬う言葉」。このことが胸にあれば、昨今話題になっている差別や侮辱なども減らせるのではと感じたのです。
さらに、言葉を声に載せることで力が加わるとともに、いい文章は読む者に力を与えてくれる、という一説。まさに、壌さんの朗読で感じたことであり、私が日々の朗読やナレーションで感じることです!素敵な文章を声に出して読んでいると、自然とリズムにのって自分が意図しない表現がむくむくと湧き上がってくることがあります。何かが乗り移ったかのように!?もちろんしょっちゅうあることではないのですが、そういう感覚を「ゾーンに入った」というのか。その後は、不思議な幸福感に包まれるのです。
コロナ禍が続く中、名文と言われる文章を声に出して読んでみませんか。不思議な力を感じさせてくれるかもしれませんよ!