新社屋への引っ越しを目前に控え、夜な夜な作業をしている。

メディアパークに行くと、これまでの録音スタイルが一掃される。
入社以来親しんできた 6ミリTPがなくなるのだ。
ご家庭では見かけない代物だと思うが、
カセットテープより太いテープが巻尺状態になったものだ。

入社以来、消せないまま置いてあったテープが何本かある。
移し替えておかないと、このテープに録音された音が聞けなくなる。
久しぶりに開けた小さな箱。
出てきたよ、「思い出のリズム」。
それも初めての生放送を前に、練習用に録音したと思われるテープが。
・・・ へったくそだなぁ ・・・
BGMに声がかき消されてるわ、感情はないわ、
エンディングに時間がなくなって早口になる・・・のは、今と同じだな。

他のテープを聞いても、忘れていた録音当時を思い出す。
自分じゃないみたいだけど、確かに私。
今の私では話せない言葉、若い声。  

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

6ミリに代わる 新しい録音システムとして 【 GB6P 】 なるものが導入された。
これは既製品ではなく、南海放送の技術屋が開発したシステムだ。
テープ類を使うアナログ式ではなく、コンピューターに取り込んでの作業になる。
並んだアルファベットが 機械オンチに 尚更プレッシャーをかける。
最新のシステムに慣れるだろうか、操作手順は難しくはないのだろうか
ただでさえ不安なのに、アルファベットの型番聞かされても覚えられないよぉ・・・

引っ越しと、新システムを覚える作業を 同時進行しなければいけない焦りの中で
技術屋が言った

   「 GB6P は、【 Good‐Bye  6弌 Project 】 の頭文字からとりました。」

―― ふと、プレッシャーと焦りが消えた。
機械的で冷たく思えた4文字に 体温を感じた。
過去にしがみついてちゃダメだ  6世了代にちゃんとお別れしよう 
でも、覚えておかなくちゃ。 へたくそな私 

   ―― さよなら6澄 ,△蠅とうバイバイ