小原(仮名)からメールが入った。
「海鮮弁当 食べませんか?樋又まで持って行きますよ (^0^)/」
なんと、殊勝な!
そうか、これまでの恩義に ここで報いようというのだな。
先日一緒だったイベントでも確か、
「終わったら、英子さんの労をねぎらいにパァッとおいしいもの食べにいきましょうよ (o^o^o)」
と、言っていたな。
結局イベントが終わった後 パァっと食べたおいしいものの支払いは私だったけど、
そのことをずっと気に掛けていたんだな小原(仮名)、そんな、いいのに。
持ってきてもらうのも なんなので、物産展が行われているデパートまで出向いた。
小原(仮名)は弁当を抱えて待ち合わせにやってきた。
行楽気分を味わうため屋上のベンチに腰掛けて食べることにした。
無粋かと思ったが、念のため聞いてみた。
「 おごり? 」 ―― 「 え?」
* * * * * * * * *
ザッパなO型と思われがちだが用意周到な私も、忘れっぽいのが玉にキズだ。
また今日も、鞄から財布と携帯だけ取り出してデパートの屋上に行ってしまった。
.
さぁ、海鮮弁当を食べよう!と思ったが、
少し風があったので、包み紙類が飛ばされないよう気をつけながら醤油のプチ袋の封を切った。
―― が、醤油は出なかった。
他に気を取られながらだったからか、経験上 このくらいの所をカットすれば チロッと醤油が出る
―― はずだったのに、思いのほか醤油口が深く、カットが届いていなかった!
‘こちらの面はどこからでもカットできます’
―― と、時々見かける表示もなかったが、切れるだろうとふんでいた。
切れんもんやね・・
手でも、歯でも、その銀袋は伸びてよれるだけで、切れ目が入る気配がなかった。
用意周到な鞄があれば、ミニカッターやら何やらが入っているのに、今日の私は身軽。
「楊枝とか使ってみたらどうですかぁ?」
恩義を知らざる者(仮名)の提案を受け入れ、箸袋に入っていた楊枝でプチ醤油袋を突いてみたが
楊枝は早々に先が曲がり、銀袋にポコポコと凹みを作った。
開かんもんやね・・
「使いますかぁ?」
先輩思いの後輩(自称)が 自分の海鮮カニ弁当にかけ残ったプチ醤油を差し出した。
「そんな、あなたの大事な醤油なのに・・・ ありがとう。」
・・・5滴 ・・・かよ
あきらめかけた私の視界に入ってきた屋上の花屋さんコーナーを見て、ピン!ときた。
―― 切り込みを入れてもらおう!
私は小さな醤油袋を持って花屋さんのガラスドアを開け、店員さんに話しかけた。
花屋の客の第一声が 「 あの、醤油・・・ 」 じゃ、店員さんが怪訝な顔をするのも仕方がない。
海鮮弁当を買って屋上で食べようと思ったんですが・・・と、事の流れを説明すると
店員さんは快くポケットからハサミを取り出してくれた。 さすが花屋さんやね。
ただ、プチ醤油袋は すっかりヨレヨレポコポコだったので、その部分を持って隠しながら
ここに切り込みを〜・・・と、わりかしきれいポイントを差し出したが、あっさり袋を取り上げられた。
おはずかしい・・・ チョキリコ。
無事切り込みを入れてもらい、喜びに満ち溢れてベンチに戻ってみると
殊勝という言葉が似合わない後輩(小原)が、私の帰りを待たず 蟹脚をほおばっていた。
魅惑の三種盛り(寺尾オーダー) →