てらお袋

誕生日の夜
「 まにあうか！？ 」 というタイトルで、とりあえず 「おめでとうございます」 的な メールが
深夜０時の時報を 過ぎて届いた。
さっき思い出して慌てて 前略早々だけ打って送ったぞ感 満載。

　はい、アウト。

そんなことがあって、 明日も早いし もう寝よう… と 思っていたある夜。
「 はっ！明日はヤツの誕生日だ 」 と思い出した。
日が変るまでは あと３０分あったけど、寝たら忘れそうなのでメールを送ることにした。
とは言っても、誰より一番におめでとうを届けたい訳では決してない。
３０分が長く感じる・・　　これさえ送れば 眠れる
２３：５９からそわそわして　０時の１０秒前には 「よし！」 というタイトルで送信ボタンを押した。

フライングだったとしても、アウトではないはず！　
翌日の返信メールによると、案の定、おめでとう一番メールだったそうだ。　
深夜０時は爆睡中だったらしいが、朝目覚めて見た一番が私で申し訳ない。

お互い、‘心のこもった おめでとう’とは言い難い・・　でもそんな師弟(?)関係の二人。

ここ数日、気に掛かっていることがある。

　　もらったはずの　バナナが　・・・ ない。

どこかに置き忘れたか
何かに 紛れこんだか・・
今頃 すっかり 食べ頃に・・

　　・・・ 怖い。

食べた分のカロリーを半減する！　と うたう ドリンク

　　う〜・・ん 怪しい。

成果はまだ見られない。　　――　　買ったのかよ！　一応買うよね。

私はどうやら父ちゃんに似ている

これまでひょうきんな母ちゃんに似ていると思っていたが
それは父ちゃんのことを知らなかっただけだった
親戚のおばちゃんや年長のいとこ達の方が父ちゃんを知っている
なにせ私は父ちゃんと長時間話したことがない
働いている姿ばかり見てきた
実家にいる頃は、朝起きた時も、夜寝る時も父ちゃんはいなかった
いつも店にいた
だから父ちゃんがどんな人なのか、ざっくりしか知らなかった

このあいだ親戚が集まる機会があった
その当日やその後もらった手紙の中に
初めて知った父ちゃんがいた

あたし父ちゃん似です

朝、ネットニュースの見出し

　　「 英子会社で 個人情報流出 」　　・・・ 英子会社 　・・・あたしの！？

んなわけない。
欧州にあるゲームメーカーの子会社で個人情報が漏洩したというニュースだ。
欧州の中でも、イギリスにあるのだろう、英・子会社。　ややこしい。
けど一瞬真面目に、どこかの英子さんというお金持ちが設立した会社かと思い、
社名のセンスはイマイチだな・・ などと呑気な想像までしていた。

欧州進出の各社各位、イギリスの子会社が 輝かしい功績を残すようお祈りしています。

調子に乗ると、小骨がのどに刺さります。

煮魚を食べながら調子に乗る女も どうかと思いますが、
嫌なものです、あのチクッとした違和感。
ご飯を飲み込むといい、などと申しますが、
過去に成功したためしがありませんし、
あーーん　と大口を開けたら 小骨が見えてたりしますので
自分で抜き取ったりします。 　（ ﾖｲｺﾊ ｵｲｼｬｻﾝﾆｲｯﾃ ﾄｯﾃﾓﾗｯﾃﾈ ）

で、大きな口をあけて、懐中電灯飲み込む勢いで鏡を覗き込んでも
今日ばかりは骨のやつ、姿をあらわさねぇ。
でも確かにある異物感、唾を飲み込むたび走る微痛。
ああ、手の施しようがないこの無力感。
そうだ！耳鼻咽喉科に行ってとってもらおう、と思ったら、午後休診。

――　やるしかない。

ごはんはなかったけど、なぜか手元にある バナーナ
ぱくり。
ごっくん。
ぱくり。

――　無駄にバナナを ２本丸呑み。

実家に帰るのに
高速割引がきく時間帯にのろうと思って早起きしたけど
洗濯やら 給油やら 「タイヤ圧チェックしましょか？」やら
会社に寄り道やら していたら、　２分、遅れた。

　オーノー。

それでも くさることなく走っていたら
降りるはずのインターを過ぎていた。

　オ゛オ゛ッ！？ ノ゛ォォォーッ！！

まったくウカツ者である。

街に用があったので
雨の中、（原付）バイクで走った。

雨なのでバッグは持たず、財布と携帯だけポケットに突っ込んで
カッパを 翻しながら走った。
そりゃまあ 足元手元首元びしょ濡れになった。
６月も中旬だというのに、会社に帰り着いた時は「寒゛っ」と身震いした。
着替えて温まろうと、濡れた上着を脱いだ時　気が付いた　――　軽・・い。

財布という名の、セカンドバッグ並みに重い私の財布
ポケットに収めた記憶は確かにある。　のに、ない。 財布が、ないっ！！

脱いだばかり濡れ上着を羽織り、再びカッパを翻して今通った道を走った。
「 あたしのバカ！どーしてポケットになんか入れたんだーーっ！！」
セカンドバッグ並みに厚い財布、落ちていれば少々距離があっても見つけられる！
・・・ただ、アースカラーなため、道路になじんでいるかも・・・
寄り道した小道、駐車している車の下、側溝、歩道、・・・皿のような目をした 怪しいカッパ女。

思い出される見られてはいけないもの・・
ああ、神様！　
電車に踏まれていてもいいです、お金抜かれていてもいいです、財布だけは！

結局、ドシャ降りの中、松山中心部をぐるぐる３回走った。　・・でも、なかった。

失意のどん底で、警察に電話をした。
財布の特徴を言った。　ただ、セカンドバッグ並みの、というのは省略した。
おおよその金額も言った。　朝、１万円のピン札を入れた所だった。　
時間や場所、他に何が入っているか・・・　　全部は言えない。聞かないで。

　　⋆　　　⋆　　　⋆　　　⋆　　　⋆　　　　

長くなるので、結論から言いますと、　　見つかりました！
親切な方が拾って、交番に届けてくれていました。
あのドシャ降りの中、あまり濡れていなかったのはすぐ拾ってもらえたから。
・・・そう、落ちていれば どうやっても目に止まる デカ財布。　
本当にありがとうございました。
交番に行く用はなかったでしょうに、わざわざ遠回りして下さったんですね。
本当に、本当にありがとうございました。　
この雨粒の数だけ貴女に幸福が降り注ぎますように。　　ああ、雨さえ愛おしい。

　　⋆　　　⋆　　　⋆　　　⋆　　　⋆　

交番に引き取りに行った時、中身を確認し記載した用紙があった。
　現 金　〇円　　
　カード　〇枚　　
　そば〇お食事券　５００円券　３枚　―――　きゃっ。

ま、ま、ま・・　まつ毛が　ないーーっ！！

化粧をしている途中で、まつ毛の異変に気が付きました。
よく目を凝らして見ると
右目のまつ毛は後ろ半分が短く切りそろえられ
左のまつ毛は目頭側が短く たわしのようです。

　なななんで？？

ハタと思いついたのは、「 必殺！ ビューラ―カット！ 」
・・・そんなカット法 知らないし、好きこのんでする人もいない、だろう。
真面目にビューラーで まつ毛 くるんっ してみたはいいが、
力が入り過ぎたのか、積もり積もったものなのか、 まぁあ！もぎ切り。
痛みはない。　傷んではいたのだろう、可哀相に。

ああ、まつ毛よ、 伸びてきておくれ。
そうじゃないと、目にゴミが 入っちゃう。

潤んだ瞳の、たわしまつ毛 ・・・

――　いやだぁぁぁぁっ！！

貴女が 私くらい　嘘がうまければよかったのに

.
私は　私の嘘に　うまくだまされればいいのに

.