ある朝、日の出より少し遅れて目が覚めた。
あ・・ 父ちゃんの誕生日だ・・
親不孝な娘は両親の誕生日も電話で済ませることが多い。
かと言って、長い年月離れて暮らす父娘の会話はタドタドしく
通話時間も10数秒で終了する。
・・あ 今年は父ちゃん節目の誕生日だ!
親不孝な娘は正月にも顔を見せなかった父に今こそ感謝を!と
花を買って帰省することを決めて布団を出た。
でも今年は特別なのだ、花だけでは物足りない!
かと言って、何が喜ばれるかもわからない。
それでもデパートで これなら使えるかしらと思う こげ茶の帽子を買った。
(父ちゃん、セール品だけど許してね、サイズも知らないけど許してね)
花屋さんは私の無理な注文に応え、黄色い花を中心にした花かごを用意してくれた。
デパートの若い店員さんは大きな紙に四苦八苦しながら きれいに包装してくれた。
実家に帰ると、父ちゃんは近所の方と将棋中だった。
母ちゃんに呼ばれて出てくると 私がいたので驚いていた。
何かこっちに帰ってくる便でもあったのか?と、誕生日だけが理由とは思わなかったようだ。
どこかぎこちない父娘は花束贈呈と帽子の戴冠式が終わると、やはり言葉少なに別れた。
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最近ね、この性格は父ちゃん譲りかな・・ って 思い当たる事が時々あるよ