今年は田んぼを見ていなかった。
田植え時期からこっち、家と会社の往復ばかりしていたのだろう。
ホタルを見に行ったけど、夜だったから蛙の声ばかり聞いてきた。

去年の田植え頃は、藤田勇次郎君と一緒に久万高原町に通っていた。

「博士の水」と呼ばれる湧き水の取材と、そこに住む人に話を聞くために。
行く度に、田を耕し・水を張り・苗が植えられと、風景が変わっていった。
田園広がる畦脇に沸く「博士の水」は、
碑が立っていなければ見過ごしてしまう程の静けさの中にあった。

水を汲みに来る人を ただ待つ時間が流れた。

流れる雲の音が聞こえてきそうな、そよぐ風の音が見えるような季節だった。
私と藤田君は、その取材の中で一人の少年に出会った。
物怖じしない元気な男の子。
昆虫が好きで、幽霊が嫌いで、肉は嫌いだけど牛丼は好きな小学二年生。
・・・聞いてもいないのに教えてくれた。
博士の水 「毎日飲んでる!」なんて、調子のいい目立ちたがり屋だと思っていた。

けれど最終的には、彼に会うために この取材を始めたのではないかと思った。

「博士の水」は、奇跡の水ではないのかもしれない。
けれど、
私と藤田にとって、サトシとの出逢いこそが、「博士の水」がもたらしてくれた 奇跡だった。

 6月中旬松山郊外

〜末は博士か大臣か?〜徹底検証「久万高原町の不思議な水」  < リメイク版>
◆ 6月18日(日) 午後 2時30分〜 ◆
出演 :よもだ親娘(宇都宮基師&寺尾英子)/博士/花岡さん/近所の皆さん/サトシ
制作 :藤田勇次郎