最終上映を終えた映画館は
次の客を待つこともなく
待合も受け付けも照明を落としていた

外は、眠りはじめた街と
まだ明るいネオンサイン

慣れない眩さから目をそらすと同時に花の匂いがした
視覚を奪われ、もはや花の匂いしか感じなかった

このネオンサインしか見えない街のどこに ――
けれど、確かにどこかで、

咲いている

映画の続きのような
絶望の中の希望のように
このネオンサインしか見えない街のどこかで