―― まさか、またおまえと仕事をすることになるとは、な・・ ――

あれは・・2年前の梅雨時だった
昭和の雰囲気が残る通りをあてもなく、ただあてもなく・・

 ――― て、

オーイッ! あてもなく取材に出て えんかーーい!?
おまけに雨もふってるやーーん!!

ディレクターTは、時々、行き先だけ決めて、何のアポイントも取らず、もぎたての取材に出る事があった
何が出るか、どう転ぶかわからない 出たとこ勝負の3日間
まずは、商店街で聞き込み、という名の 他愛もないお喋りに出掛ける

 あれは・・

二軒目か、もしかすると一軒目だったかもしれない‘ 靴屋さん ’
たしか店頭に人目を引く大きな文字で 「 魔法の・・ 」 何とかと書いてあった。
奥さんに話を聞くと、とても歩きやすいだったか、膝にやさしいだったか、お勧めの靴がそれだった。
そのウォーキングシューズは価格帯も広く、奥様自身もその靴を愛用してらした。
しかし私達は、すすめてくださるその靴の横の棚に、見つけてしまったのである ――― 

その店は、土地柄もあり、田植え用の地下足袋が置いてあった。
しっかりしたゴム素材で作られており、ふくらはぎの中ほどまでの長さがある。
パッと見、ブーツのようにも見える。ただ、間違いなく、地下足袋、である。

 「 それで いきましょう 」 

――― ???
何をでございましょうかディレクター様?
「 買いましょう 」
かっ、かっ、買うのでございますか??
町歩きのウォーキングシューズではなく、こちらでお間違いなく??
「 履きましょう 」
はっ、はっ、履くのでございますか??
旅はまだ始まったばかり、田植えの予定もございませんが?
「 いきましょう 」

こうして、それから3日間、なぜかゴム足袋を履いたまま町の取材をすることになったのです。

雨がふっても跳ね返りを気にしなくていい快適な・・、地下足袋。
そしてなぜか、誂えたかのようにコーディネートされた足元は、
取材先でも不審がられることもなく、こちらから言って気が付かれるくらい

 ―― その時の地下足袋です。

靴屋の奥様、魚屋の奥様、お元気ですか?
ご提案頂いた通り、田んぼに出る事になりました、オクレバセナガラ。
やはり町歩きよりは、田んぼの中がしっくりきます。
相棒のヂカタビと 力を合わせて、立派な米を育ててみせます!
ご期待くださいね。