「自民党県連の研究」①新しい秩序の誕生

オピニオン室

『第一部・分裂の深層①~新しい秩序の誕生~』

おととい(7日)、県議選の投開票が行われ、新しい47の議席が決まりました。

すでに第1会派をめぐる”数の戦い”が始まっています。

「きれいごとではない。議会は数。」(議長経験者)

焦点は『自民VS志士』です。

  改選前の3月13日、私はこれまで、ありえなかった光景を県議会で目にしました。

議会閉会後、中村知事がまず、県議会第2会派「志士・無所属」(12人)にあいさつに訪れたのです。

秩序を重んじる議会ではありえなかったことです。

これまでの秩序を重んじるなら、知事はまず、数が最も多い第1会派「自民」(15人)から、あいさつに行くべきです。

しかし、自民分裂は議会に新しい”秩序”を生み出しました。

それは、議長を出している会派からまず、知事はあいさつをする、という”秩序”です。

 自民党が一枚岩で、圧倒的多数を誇っていた2017年3月までは、第1会派以外から議長が選出されることはありえませんでした。

しかし、自民が2つに割れ、議会内で2番目と3番目以降の勢力が協力すれば、1番目を追い越す勢力(数)になる現象が起きました。

この結果、議長は「志士・無所属」から、副議長はなんと!「社民」(3人)から選出されるという状況が生まれました。

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平成の最後に実現した「社民」の副議長(村上要、今治市・越智郡)は、自民党本部にとっても想像しなかった事態だったはずです。

なぜなら、「社民」議員が去年夏、自民党本部で行われた『全国原発立地県 議長会議』に出席したからです。(議長の代理出席)

 村上元県議(今回の県議選で引退)によると、その席で自民党本部の元幹事長で、ある派閥の重鎮が「全国には(原発に反対する)変な知事がいる」などと発言したということです。

村上元県議は「自民党を知る上で、大変、勉強になった」と笑いながら話します。

 村上元県議の「原発会議」出席を、「出席を辞退するのが、反原発の政党の議員としての矜持ではないか」(自民の幹事長経験者)と批判する声があります。

一方で、こうした県議会の”新秩序”は、「社民」が中心となった議員立法『木材利用促進条例』を、「自民が修正を加え、ひっつく形で」(村上元県議)成立させるという、「画期的」(志士の議長経験者)な歴史を生み出しました。

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知事の議会後のあいさつが、第1会派を飛ばして、議長を出しているからという「後付けの理由」(議長経験者)で、第2会派から行われることには「無理がある」(議長経験者)、との声が聞こえます。

「自民」VS「志士」。

第1会派と議長を巡る戦いの第2幕が、すでに水面下で始まっています。

  白石春樹元知事が築いたとされる『保守王国・愛媛』は、強力な一枚岩、「義務を果たさなければ、死にたくなるほど怒られた」(幹事長経験者)という権力の集中と、統率によって成り立っていました。

今回の自民分裂で、見逃されがちな重要な点は、『保守3分裂』という視点です。

改選前の第3会派「愛媛維新の会」(6人)の政治信条は、明らかに保守であり、33人の保守系議員が3分裂していたとみることが出来ます。

つまり、政治信条で言えば、どの会派が”合併”しても、おかしくない状況にあります。

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今、愛媛の保守政治に何が起こっているのでしょうか?

『自民党県連の研究』では、現在の保守分裂が一時的な”歴史の気まぐれ”なのか、それとも”歴史のダイナミズム”の1つのサインなのか、取材を続け、シリーズでお伝えしたいと思っています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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