決戦!衆院選②立民~脱自民への胎動

オピニオン室

「ガチガチの自民党の地盤で
入り込むのが難しい」
(立憲民主党の選挙担当者)という愛媛4区で
「自民じゃないと政治が出来ん!
というけど、
そりゃ、そうだけど
それはちょっと、寂しすぎるでしょ」
という地方議員に出会いました。


伊方町議会のピカピカの新人議員、
田村義孝さん(44)です。

衆院選へ向け、立憲民主党の杉山啓さんを
応援しています。


伊方町二名津という人口320人ほどの集落から
有権者 7859人(定数14/16人立候補)の
伊方町議会に今年4月立候補し、
253票を獲得。最下位で当選しました。

二名津から議員が生まれたのは
16年ぶりといいます。


創業72年を誇る地元名物、
うにまんじゅうを作る和菓子屋の3代目。

政治に縁があったわけではありません。

◆立憲民主党員でもないし、
自民党が嫌いなわけでもない

田村さんは伊方町議会議員選挙に
無所属で立候補していて
「別に反自民でもないし、
もしかすると将来、
自民党に所属することもあるかも」
といいます。


では、なぜ?「保守の美田」
(故白石春樹知事)とまでいわれる愛媛4区で
自民党候補ではなく、
立憲民主党候補の杉山さんを
応援するのでしょうか?

◆政治への動機

田村さんの店舗の前の空き地に
不思議な物体がぶら下がっています。


「何ですか?これ」(私)。


「これは海の漂着ゴミ、
養殖筏のブイが海岸に流れ着いたのを
飾りにしたんですよ」
「海ゴミの美化と再利用を兼ねた飾り。
こういう地域活動を色々してるんですよ」
(田村さん)。


さらに、
「ここは古い空き家があったのを
地域のみんなが”手弁当”で解体、整地し、
公園にしたんですよ」(田村さん)。

「えっ!これって公園だったんですか?
てっきり、単なる空き地かと・・・」(私)。

夏祭りなどでは露店も並び、
地域みんなの賑わいの場になるといいます。

こうした活動を日々、続ける中、
自然に政治への関心が生まれ、
この春、初めて議員に立候補しました。

田村さんが政治を志す動機で
「政党」という組織が
入り込む余地はありません。
必要なかったのです。


杉山さんを応援するのは
杉山さんが
地元、旧三崎町出身(父方の本籍地)で、
「”お上”ではなく”わたしたち”の政治へ」
という政治理念に共感したから
といいます。

◆若い政治家の”潮流”


立憲民主党の県議会議員で
衆院選の選挙責任者でもある
西原司さん(43・新居浜市選挙区)の政治理念も
「”お上”にたよらない」という点では
田村さんと共通します。

大学生時代を北海道で過ごした西原さんは
「みんなで助け合わないと生きていけない」
(西原さん)という厳しい環境が、
北海道で旧社会党の強さを生んだといい、
そうした政治土壌での体験が
自らの政治活動の出発点だといいます。


2人は”身近なコミュニティ重視”
という政治姿勢で共通しています。

田村さんは、地元老舗和菓子店の3代目、
西原さんは、エッセンシャルワーカー出身。

社会で実際に働き、その体験から
政治を志した点も同じです。

◆実は自民党議員も・・・


実は、こうした
「”身近なコミュニティ重視”が
政治への出発点」なのは、
愛媛4区(主に南予)の多くの自民党議員も
同じでした。

農村部の青年団活動が
政治家としての原点、という
自民党議員はたくさんいましたし、
その経験が、自民党員でありながら
どこか社会民主的な政治理念を持ち、
リベラルな”匂い”を醸し出していました。

一方で、政権政党である自民党は
国の予算編成権も事実上、握っていて
「地元の声を届ける」は
「予算を獲ってくる」につながりました。

「予算陳情に行っても
自民党国会議員じゃないと
官僚に名刺を差し出し、
自己紹介から始まる」(自民党県議)。

そういう野党国会議員の頼りなさでは
特に社会基盤整備の遅れた南予は、
「自民じゃないと政治が出来ん!」
(田村さん)となったのです。

◆新”コミュニティ”世代はお金に無頓着?


興味深いのは、西原さんが
「補助金には頼らない、お金も自分でつくる。
自分たちの町は、自分たちでアイデアを出し、
みんなで協力してつくる」(西原さん)
コミュニティを目指している点です。


田村さんらが協力して作った”手弁当”公園も
その一つの例です。

◆IT時代に生まれる新たな政治勢力を
誰が束ねるか


西原さんによると、県内の立憲民主党の
地方議員は県議も含めて現在、9人。


しかし、田村さんのような
これまでの「政党」の枠に囚われずに
その地域ごとの課題に即した
現実的な解決策を模索する「層」が
地方議員に徐々に生まれています。

こうした若手議員は、
SNSで地域課題を共有しあったり
意見交換するなどし、
「政党」という組織で組織化されない
緩やかで、自由な
政治勢力を産みつつあります。


この「層」の特徴の1つは
従来の組織のように
明確な指揮命令系統で
縦方向に組織されていない点にあります。
フラットで自然発生型の組織です。

こうした政治勢力(「層」)を
全県的に束ねることができるのは
『完全無所属』の立場を産み出した
永江孝子参議院議員しかいないのでは
ないでしょうか。

立憲民主党も
「競り合った場合、最後の永江さんの
テコ入れが勝負を左右するかもしれない」
(西原さん)と期待します。

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「自民じゃないと政治が出来ん!
というけど、
そりゃ、そうだけど
それはちょっと、寂しすぎるでしょ」

この心情が
どこまで”票”に現れるのか?
束ねられるのか?

衆院選の注目点の1つです。

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愛媛4区には現在、3人が
立候補を表明しています。
(あいうえお順)


桜内 文城さん


杉山 啓さん


長谷川 淳二さん

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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