FC今治、矢野社長に伝言です

ニュース解説

「岡田(武史会長)が

うち(FC今治)に来て7年経つのですが

今までで一番

“1勝することの難しさ”を痛感しました」

今日の午後、南海放送を訪問した

FC今治・矢野将文社長。

この場に同席した誰もが

2か月半ぶりに勝利した昨日の事実に

心から安堵していました。

昨日、ホームで開催された

明治安田生命J3リーグ第18節。

FC今治対藤枝MYFC戦は

まさに死闘でした。

試合前、今治は

暫定で15位の最下位でした。

J3リーグに降格がないことを

よすがにしてはいけません。

シーズン前にJ2昇格を掲げていたチームとしては

許されない順位です。

当然、練習でも笑顔はなく終始ピリピリムード。

試合当日も会場は元気がありませんでした。

五輪による中断期が明け、

さあここから挽回と思ったシーズン後半。

引き分けと負けでスタートダッシュに

またも失敗した3試合目。

不調の要因が明確でないだけに

改善が難しくなぜか勝てない。

布新監督の表情は険しくなるばかりでした。

負ければ最下位が確定。

今治は完全に追い詰められていました。

「勝てない悔しさは皆が持ってる。

でも少しずつ芽が出てる手応えもある」

ベテラン布監督の長いキャリアで

ここまで苦しむのは初めてです。

ただ、「やってる事は間違ってない」

ブレずにやり続けるリーダーを選手、

クラブ、サポーター皆が信じ

一丸となっていることは救いでした。

「中には(不調の要因は)

環境が整い過ぎているから

ダメなんじゃないか

というご批判も頂いてました」

冒頭の訪問で矢野社長が

神妙な顔で告白しました。

実は同じようなことを

元日本代表でFC今治のMF橋本英郎選手から

聞いたことがあります。

「僕たちに今必要なのは

綺麗なサッカーじゃなくて

“なりふりかまわない泥臭さ”だと思います」

流石ベテラン、答はやはりそこにありました。

昨日の相手・藤枝は

今治と同じように監督交代という劇薬を

服用したばかり。

その効果は抜群で一気に蘇生し前節を5-0で快勝。

サッカースタイルも180度変え

生まれ変わりに成功。

やり続ける事を選んだ今治とは

対照的なチームでした。

先制点は相手の藤枝が取ります。

新しいチームスタイルを体現する様な

パスを繋いだ鮮やかで美しいゴールでした。

また今日も負けるのか…

一気に静まり返り重苦しい空気のホーム、

夢スタ。

反撃の狼煙に最初に火をつけたのは

一人の助っ人。

ギニア・ビサウからの外国籍選手、

バルデマール選手でした。

コーナーキックからの折り返しを

バルデマール選手が右足で押し込み同点に。

先ほど生まれた相手の美しいゴールとは全く違う

ゴチャゴチャっとした混戦からの

力の無いカッコ悪いシュートでした。

が、これこそ今の今治に必要なゴールでした。

実はこのゴール。

2分前のバルデマール選手自身の

守備から始まっています。

相手ボールに食らいついた

バルデマール選手が

ボールを奪い切り、最後は原田選手がシュート。

ゴールとなりませんでしたが

相手ワンタッチが有り今治のコーナーキック。

それが2つ続いて

先ほどの同点ゴールのシーンへと

繋がっていきます。

ここから完全に火がついた両チーム。

引き離されては追いつき、

突き放しては迫られの

手に汗握るシーソーゲーム。

両チーム合わせて7つのゴールが生まれる

殴り合いの乱打戦になりました。

それぞれ良いゴールシーンばかりでしたが

今治の窮地を救ったのは最初の同点弾、

7つのうちで最もダサい得点だったと

言い切れます。

カッコよくないフィニッシュだったけれど

最後一押しを気持ちでプッシュしたゴール。

今の今治に最も足りなくて

一番欲しかったゴールの形でした。

試合は結局4-3で

絶好調の藤枝を下した今治が

6試合ぶりの勝利。

2か月半振りに

夢スタでサポーターの笑顔を見ました。

監督を変え

自分達のスタイルも変えて戦った藤枝MYFC。

監督を変え

自分達のスタイルは変えずに戦ったFC今治。

スコアは大味ですが

これからの今治にとって意味のある一勝でした。

試合終了の笛が鳴った瞬間、

今治のGK修行選手は

ボールを抱え込んだままうずくまり動けない。

他の選手も

ピッチに突っ伏し倒れこんでいます。

バルデマール選手はひざまずき

初秋の夕暮れに

天を指さし、神に感謝していました。

全選手と全スタッフと全サポーターで

手に入れた勝点3。

まだ満足な順位ではありませんが

選手達は小さな答えをピッチの中で

見つけたようです。

残り11試合、シーズンは終盤へと向かう中

ここからチームがどう生まれ変わるのか

楽しみです。

そして…

今年はもう一つ気になる

大きな事がまもなく始動します。

「そうですね!控えめに申し上げても

とんでもないことです」

訪問の終盤で

一段と声のトーンを落とした矢野社長。

新スタジアム(通称“里山スタジアム”)は

10月下旬地鎮祭、11月着工で

いよいよ本格的にスタートするようです。

「今回スタジアム建設に出資頂いたみなさんは

コロナだからこそ

地方をスポーツで元気にするという

我々のフィロソフィに共感してくれました。

逆に言うと“コロナが無かったら”

そう仰ってくれなかったかもしれません」

このビッグプロジェクトを

“このご時世”にチャレンジすることに

大きな運命と確固たる使命を

感じているようでした。

新スタジアムは2023年シーズンにあわせて竣工。

報道されているように

サッカーの試合だけでなく

356日、人が集うような複合型の

〝里山スタジアム〟を目指します。

完成までの様子ももちろん、

追いかけさせていただきます。

最後に

訪問中、お伝えできなかった事を。

「矢野社長!

スタジアムが完成した暁には

こう言われましょう。

“環境が整い過ぎているから強すぎる!”って」

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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