コロナで試練 新居浜・もの作りの反転攻勢

オピニオン室

コロナ禍では
外出自粛に伴う飲食店の売上減少が
クローズアップされますが、
工業都市・新居浜が誇る
機械産業にも影響が及んでいます。

試練を逆手にとり、
コロナ禍だからこそ見えてきた
“自社の強み”に磨きをかけることで
反転攻勢に打って出る
1人の経営者を取材しました。

売上700億 新居浜の機械産業

新居浜市の工業地帯では、
重化学工業や機械産業などの工場で
さまざまな製品が製造され、
国内外に出荷されています。

新居浜市によりますと
新居浜機械産業協同組合がまとめた
組合に加盟する77社の年間売上は、
2020年7月時点で約700億円。

クレーンや建設機械、
それにプラントなどの
部品となる鉄鋼業製品は、
一般的に受注から納品まで
1年から1年半ほどかかるため、
当初は新型コロナの影響は
ことし1月ごろから
表面化するではと
考えられていました。

輸出がストップ…

しかし、
協同組合新居浜重機械工業団地の
理事長を務める
株式会社西岡鉄工所の
西岡圭社長によると、
影響は想定を上回る
早さだったといいます。

「去年夏に取引先の大手メーカーから
『新聞印刷用輪転機の
インド向け輸出が
ストップになった』と
連絡が入りました。
このため、
7月と8月の工場稼働率は
例年の半分にまで落ち込みました」

この影響で、
西岡鉄工所の
2020年8月期の売上は、
対前期比で
約2割減少したといいます。

ピンチをチャンスに

受注が減り、
考える時間が持てたという西岡社長。

浮かんだのが、真逆の発想。

思い切った設備投資でした。

「新たに4000万円あまりの
設備投資を行いました。
受注が減っているのになぜ?と
思われるかもしれませんが、
既存の製品以外に
間口を広げたいと思ったのです。
新規の受注増を
目指す狙いもありました」

ことし3月、
西岡社長は近くにあった
工場跡の建物(約100坪)を
およそ2000万円で購入し、
第2工場を設立しました。

 西岡圭社長

同じ3月に導入したのが、
精度が高く、
ひずみの少ない作業が
可能となる
レーザー溶接機械の増設でした。

実はコロナ禍でも
受注があまり減らなかったのが、
レーザー溶接機械を使った
製品だったのです。

「自社の強みが
コロナの影響で見えてきた。
ここで勝負すればいいんだと
分かったんです。
この機械だけで
2千数百万円の投資でしたが、
決めました」

 新たに増設したレーザー溶接機械

気になるのが資金の融資ですが…
「実は金融機関も、
この時期の設備投資は珍しいらしく、
金利についても
柔軟に相談にのってくれました。
借入しやすい状況なのかなと
感じましたね」

トライ&エラー 技術者の熱意

新たな設備投資を追い風に、
反転攻勢に打って出た西岡社長。

ことし4月からは
受注も増加傾向が見込まれ、
西岡鉄工所の
2021年8月期の売上は
前期を1割以上、
上回る見通しだといいます。

しかし、業界全体では
当初の予想通り
ことし1月以降売上が減少していて、
新居浜機械産業協同組合に加盟する
77社の年間売上も、
2021年7月には
前年の約700億円から
1~2割ほど
減る見通しだといいます。

「世界的なワクチン接種の動向や
輸出先の経済状況など
不安定な要素が多く、
今後も
気を引き締めなければ」と話す
西岡社長。

もの作りにかける情熱が、
愛媛の産業を支えています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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