2011年3月11日の東日本大震災から、きょうで10年。愛媛でも南海トラフ巨大地震の発生が予想され、宇和島市では子どもたちが津波防災の大切さを学んでいます。
【津波リスクのある宇和島市中心部】
宇和島港周辺
愛媛県がまとめた南海トラフ巨大地震の被害想定によると、宇和島市の最大震度は7、マンションや学校施設、それに商業施設が立ち並ぶ宇和島港には、地震発生から72分後に最大で6.5メートルの津波が押し寄せると想定されています。
津波からいかに身を守るのか。先月下旬、宇和島市立明倫小学校で開かれた防災の特別授業では、5年生の子どもたちが“津波防災のリアル”を学びました。地震や津波の怖さを感じてもらおうと、始めに震災当時の映像を視聴。大きく揺れる住宅や津波に襲われる町の様子に、子どもたちは厳しい表情を浮かべつつ津波の現実を直視し、「これがもし宇和島で起きたら…」と危機意識を高めていました。
【被害の前に考える“事前復興”】
津波防災の大切さを知った子どもたちを前に、講師役を務める宇和島市危機管理課の山口賢司防災推進アドバイザーが提案したのが、“事前復興”という考え方です。まちや人が被災しないために、事前に出来ることは何か。子どもたちは柔軟な発想でアイデアを出し合います。
アイデアをいくつか紹介すると、「町全体を地面から風船で浮かべて地震の揺れをやり過ごす」「津波の高さにまで伸びる防波堤」などなど。大人の視点では「ちょっと難しいだろう」とつい考えてしまうかもしれませんが、山口さんは「否定することなく、実現性を考えてみましょう」と子どもたちに語りかけていました。
【地震への備え 若い世代にも】
南海トラフ巨大地震の発生確率は、10年以内に30%、30年以内だと70~80%となっています。このため現在11歳の子どもたちは、将来的に南海トラフ巨大地震に遭遇する可能性が高いと言えます。
今後の科学技術の進歩によっては、子どもたちのアイデアの幾つかは実現する可能性がありますし、防災に積極的に関わろうとする子どもも出てくるかもしれません。山口さんの狙いはここにあります。「若いうちから危機意識を持ってほしい。そして命を守る行動に繋げてほしい」との願いを込めます。
いつ起こるか分からない大地震と、その後に押し寄せる大津波。
あの日から10年を迎えた今、私たち大人も改めて危機意識を高めていく努力が求められています。