今回のテーマ、“リード”とは、キャスターが顔を出してそのニュースの概要を伝えるパートです。
リード(スタジオ)→本編(VTR)というのがテレビニュースの基本形。
リードは、視聴者に「本編を見たい」と思ってもらうための種まきの場です。
ニュース番組を視聴する際、リードだけを見た段階で「このニュースには興味ないや」と
チャンネルを変えてしまうことありませんか?私はよくあります。
ニュース番組の作り手としては、そう思ってもらっては商売上がったりなので、
リードに知恵を絞ることになります。
ただし、サブタイトルにも書いた通り、リードは“諸刃の剣”、
視聴者の見たい欲求をわしづかみすることもあれば、逆に手放してしまうこともあります。
例を挙げます、「愛媛FC2021新体制発表」のニュースです。
【リードA】
J2リーグを戦う愛媛FCの2021シーズン新体制がお披露目されました。
【リードB】
サッカーJリーグ愛媛FCが新体制を発表しました。
22チーム中21位からの巻き返しを期し、
チーム史上最高の5位となった2015シーズンの主力メンバーを召還です。
【リードC】
サッカーJリーグ愛媛FCが、新体制を発表しました。
昨年ブービーと苦杯を舐めたチームが打ち出した、起死回生の戦略とは?
Aは愛媛FCの会見を取材した記者が書いたもの、
Bは記者の原稿にデスクが筆を入れたもの(リライトと言います)、
Cは今回の例示のために私が創作したものです。
一般的にはリードはコンパクトな方がよいとされます。
…ので、記者は出来事だけのリードとしました。ですが、
デスクは物足りないと感じ、本編の中からワードを拾ってきて膨らませました。
Aの場合、サッカーに興味のない人はサヨナラします。
ただし、サッカーや愛媛FCに興味のある人は、基本情報を知っているので、
「昨シーズンどべ2の愛媛FCが、巻き返しにどんな手を打ってくるのだろう」と
興味を持って本編を見てくれます。
しかし、サッカーに興味のある人は全体の中では限られているので、
本編の視聴者もそれなりの数にとどまると推測できます。
Bの場合、リードに基本情報が盛り込まれているので、
愛媛FCの昨シーズンを知らない人が見ても、
「残念なシーズンからの巻き返しに、愛媛FCのレジェンドたちが帰ってくるのか、
どんな選手なんだろう、期待できるかな」と本編を見てくれるかもしれません。
ただし、リードで巻き返しの方法をばらしてしまったので、
本編を見なくてもニュースの主旨がわかり、もう見なくていいやとなるかもしれません。
Cの場合は、サッカーや愛媛FCに興味があろうがなかろうが、
「起死回生の戦略」というワードに惹かれて本編を見てくれます。
ただし、本当に起死回生の戦略だった場合はいいのですが、
それが誇大広告だった場合、番組の信用は失墜します。
「この番組は、何でも大袈裟に触れこむだけで内容が伴わない」と思われてしまっては、
影響は計り知れません。
リードが”諸刃の剣”だと言った理由です。
ABCどれが正解というわけではありません、ケースバイケースです。
しかし、リード如何で本編を見てくれる視聴者の数や属性が大きく変化することは
間違いないと思います。
私がリードを書くとき(リライトするとき)考えるのは3つのポイントです。
①何に興味を持ってもらうか
②そのために何を書いて、何を隠すか
③誇大広告になっていないか
①②の例です。
■結果に興味を持たせる■
スポーツの勝敗、判決など。これが一番わかりやすいリードです。
「巨人の3連勝は成ったでしょうか?」
リードでは結果や結論を隠すことで、結果や結論を知りたい視聴者を本編に誘います。
■詳細&情報に興味を持たせる■
結果はばらしておいて、内容のおもしろさの種まきをします。
「巨人が阪神を3タテ、その立役者となったのが…」
詳細を知りたいという視聴者を本編に誘います。
■映像&シーンに興味を持たせる■
魅力ある映像やシーンが本編に登場することを予告します。
「坂本の超ファインプレーが巨人を3連勝に導きました」
美しい映像や珍しい映像、また名珍場面を見たいという視聴者を本編に誘います。
ぜひリードに注目してニュース番組をご覧ください。
次回のニュースのウラカタは「キシャのお仕事」。
ネコねだってます。
てぶくろ(17歳・女の子)
2003年に重信町(合併前!)の道の真ん中で出会って以来長いつきあいです。