11日(土)、今治市の病院で専門医が知ったら「仰天するのではないか」(精神科の認定看護師)というeスポーツ大会が開催されました。
eスポーツとはコンピューターゲームを使って競うスポーツで、去年、ジャカルタ・アジア大会で公開競技に採用されるなど注目度が一気に高まっています。
◆eスポーツにつきまとう不安
しかし、つきまとうのが”eスポーツはゲーム依存を引き起こすのではないか”という不安、あるいは批判の声です。
こうした疑問に、科学的な視点から答えを出す可能性のある”実験的な取り組み”が今治病院で始まりました。
◆不登校とゲーム依存は”共存”?
今治病院は精神科の単科病院で、この日のeスポーツ大会には学校に行きづらい、あるいは不登校の子どもを中心に23人、中には発達障害を抱える子どもいました。
不登校の子どもは多くの場合、ゲーム依存も抱えているといいます。
◆卵が先か?ニワトリが先か?
ただ、現場の看護師によると『不登校になって時間が出来たからゲームをする』のか、それとも『ゲームにはまって不登校になった』のか、原因と結果の関係が分からないと言います。
◆”コペルニクス的”発想の転換
こうした中、この病院ではゲームを単に取り上げだけでは本当の問題解決にはならないのではないか?という仮説を立て、逆にeスポーツ大会を開き、みんなでゲームを楽しむことが、かえって現状の打開に役立つのではないかと考えました。
実施責任者の1人である精神科の認定看護師、出山義洋さん(44)は「子どもたちは普段、ネットを通じてゲームをしている。生身の人間との触れ合いを楽しむことで、ゲームをポジティブに捉えてもらったという喜びを感じるのではないか」と期待します。
◆大切なルールづくり
この取り組みのポイントは、ルールをはっきりと子供たちに示している点です。
①ゲームをする時間を決める、②対戦相手をけなさない、③負けてもものを投げないなどです。
さらに、父母25人も参加し、親子でゲーム大会を楽しみました。
◆自己表現としてのゲームプレイ
eスポーツへの理解を阻んでいる理由の1つに、ゲーマーは自己表現の1つの方法として、ゲームプレイを見せているという感性を、周りが(特に、古い世代が)理解できないという点があります。
運動会でキレキレのダンスを披露するのも、かけっこでダイナミックな走力を見せつけるのも、ゲームで華麗なテクニックで注目を集めるのも、多様な自己表現の1つなのです。
このeスポーツ大会が、そうした多様性を受け入れる”場”であることを示そうと、会場には絵画やプラモデルの展示コーナーも用意されました。
私はこの緻密な絵にビックリしました。学校に行こうが行くまいが、人間のDNAには、自分を表現したいという本能的欲求が受け継がれているんだなぁと感じました。
◆eスポーツはゲーム依存につながるか?
大会を見学に訪れた愛媛大学医学部付属病院・精神科の川邉憲太郎さん(ゲーム障害が専門)は「eスポーツがゲーム依存につながるという研究はない」としつつ、「きっかけとなる可能性も否定は出来ない」と話します。
しかし、「ゲームに逃げ込んだり、ゲームにはまったりせざるを得なかった心の存在に焦点を当て、そのいきさつや過程に寄り添うべき。単純にゲームを止めさせるだけでは問題の解決にはならない」とし、今回の取り組みを「本当に画期的」と評価しました。
◆今治病院の取り組みと、愛媛県eスポーツ連合
私は今月1日に発足した任意団体「愛媛県eスポーツ連合」の運営委員長を務めており、今治病院の出山さんらから半年ほど前に、今回のeスポーツ大会への協力を求められました。
今治病院では今後も年に2回程度、定期的に大会を開催し、科学的な視点から「不登校とゲーム依存」に関するデータを集め、治療に役立てたいとしています。
愛媛県eスポーツ連合は、今後も大会に協力したいと考えています。
※愛媛県eスポーツ連合の公式twitter
https://twitter.com/ehime_espo