なくならない児童虐待やDVに対し、私たちにできることはなにかー。
(11月28日開催)
講演会「小説『展望塔のラプンツェル』から子ども・女性への支援を考える」が、先日開かれました。
主催は、女性の夜間電話相談やDV被害者のサポートなどを60年以上行っている愛媛県女性保護対策協議会です。
多くの人に現状を知ってもらうため半年以上前から準備を進めてきた協議会のみなさんのお話を、ニュースな時間の中でも何度かご紹介させていただきました。
トークセッションでは、児童虐待をテーマにした「展望塔のラプンツェル」を書いた作家の宇佐美まことさん、性暴力やDV、虐待などの相談に精力的にかかわる弁護士の射場和子さんが登壇しました。
司会を務めた石丸世志副会長から「デビュー作『るんびにの子供』からずっと宇佐美さんの作品には、児童虐待やDVなど社会的弱者がテーマになっている」と紹介がありました。
(宇佐美まことさん)
宇佐美さんは、ご自身の作家活動の源泉でもある「観察力、想像力」をもつことの大切さを前置きし
「あの子は今日ちょっと元気ないな、とか、ひとりでおるな、とか、大きな力にならないかもしれないが、自分が誰かに気を付けてもらっている、見てくれている人がいると思うだけで子どもの力になれる」と語ります。
(射場和子さん)
弁護士の射場和子さんは、愛媛大学教育学部を卒業後、日本や海外で企業を経営していましたが、40歳を過ぎたころ突如体が動かなくなり、入院、手術。会社も仕事も健康もすべて失い傷心の中松山に帰郷。そこである出会いがあり一念発起して、43歳で法科大学院に入ります。47歳で司法試験に合格し弁護士になったという異色の存在です。
少年事件でさまざまな少年に向き合う射場さんから、印象的な言葉がでました。
「彼らは、私のように先生と呼ばれる職業の人間は大っ嫌い。正しいことを言い説教がましいことをいう。だからなかなか心を開いてもらえない。むしろ心を開いてもらおうと思う私自身が、彼らからすれば、何かを強制しようと押し付けるものとしてそこに存在しているのかもしれない」-。
犯罪を犯した少年に、わたしたち”立派な“大人は、何とか真実を話してもらい反省してもらおうとする…その行為は、ある意味、上から下をみていないか、と。
射場さんは、こう続けました。
「目の前にいるその存在は、私自身と全く変わりない。この世の中に生を受けた“基本的人権”を与えられたすばらしい存在であるということを感じ接していけるか、それが大事だと思っています」―。
大人だから子供だから、強いから弱いから、立派だからそうでないからということで、立場が違うわけではない。いるだけで尊重すべき存在である…。はっと気づかされる言葉でした。同時に、宇佐美さんの語った”気にかけること”とは、その存在を認め尊重すること。同じことなんですね。
県職員時代からずっと弱者支援に関わってこられた協議会の石丸世志副会長。虐待やDVの被害を少しでも減らす手段として「小説の力」を信じ、精力的に発信する宇佐美まことさん。弱者とどのように向き合うことが大切なのか語る射場和子弁護士。
(開催のために奔走した石丸世志さん)
大切な言葉があふれた2時間でした。
この講演会の模様は、えひめCATVの「イベントチャンネル」で12月15日(火)に放送されるそうです。
いっしょに考えてみませんか。