ふらりと山頭火

ニュース解説

~横顔の美しいジャズ~
地下のバーで生演奏を聴きながらひとりバーボンを傾ける…
そんな情景を思わせるこの句、作者は種田山頭火です。
没後80年、戦前を生きた種田山頭火の句は、現代に生きる私たちにとっても、鮮やかに心に迫ります。

(一草庵 松山市御幸1丁目)

ほぼ10年おき、社会や経済状況が厳しくなる頃に起こる山頭火ブームですが、私も、
教科書でちょっと習ったことはあったけど、深く心に沁みてきたのは社会人になってから。
分け入っても分け入っても青い山~ は、
自分に自信がなくしんどくて孤独だった社会人2年目に、すーっと入ってきました。

(太田和博さん)

「私の解釈ですけど、山というのは人それぞれの目標と考えてもいいと思うんですよ。スポーツでも仕事でも、一つ覚えたらまた新しい目標がでてくるように。山頭火は、分け入って分け入って新天地を求めていたと思うんです」―。
山頭火が晩年を過ごした松山市御幸の「一草庵」の案内人業務や、山頭火検定の創設、命日の法要などを行っているNPO法人まつやま山頭火倶楽部の太田和博事務局長はそう語ります。

山頭火の句には、自分の心と対峙させてくれる、そんな力があるのかもしれません。

~捨てきれない荷物のおもさまえうしろ~
一草庵を訪ねてきた、ある女性のお遍路さん。90歳のお母さんの介護に明け暮れていて、心の悩みがあるのは自分だけでない、山頭火さんもこんなに悩んで重い人生の荷物を背負って歩いているんだと、この句に触れて、すこし自分の心が軽くなったような気がしましたと話してくれたそうです。

~あの汽車も故郷の方へ音たかく~
太田さんが印象に残る句です。大阪に就職したころ、線路のそばにある独身寮の小さなベッドに横になっていたとき、ラジオから永六輔さんが紹介したこの句。「僕も大阪に来たばかりで、一人で来たんでね、ほろりと感じたんですよ」-。

没後80年ということで、出身地の山口や、終の棲家の松山など各地で山頭火を顕彰するイベントが開かれています。
一草庵では現在「放浪の俳人山頭火一草庵まつり」が開催されています。
山頭火の俳句をキーワードに制作したアートの展示、また10月10日(土)と命日の11日(日)には、トークイベントも開催されます。

太田さんは一草庵でぜひ見てほしい句があるといいます。

~濁れる水の流れつつ澄む~
「こんな閉塞された社会、新型コロナの時代に、山頭火のこの俳句を読むと、山頭火のメッセージが聞こえてくるように感じるんです。濁れる水も流れていたらいつか澄んでくると思う、あなたもそう思ってくださいよ、と」―。

松山城をバックに建つこの句碑、コロナ禍を生き抜く私たちに、山頭火がくれたプレゼントなのかもしれません。

10月10日(土)16:00~放送の「ザ・VOICE」。
NPO法人まつやま山頭火倶楽部の太田和博事務局長にお話を聞きます。

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この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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