第80回「愛媛に影響は?GoTo“東京”と地域共通クーポン」

オピニオン室

■「GoToトラベル」東京追加
新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けた観光業の需要を喚起するため、国は7月22日から「GoToトラベル」をスタートさせました。
この「GoToトラベル」、当初、東京発着については、都内で新型コロナ感染者が増加傾向にあったことなどから対象から除外されていましたが、10月1日から追加されることになりました。

■「GoTo」“東京”追加 初めての週末

愛媛県内の観光地でも期待と不安が入り混じる中、東京からの観光客の受け入れが本格的にスタートしました。
東京発着が追加されて初めての週末、愛媛の空の玄関口「松山空港」では、観光客の姿も見られましたが、大きな混雑は見られませんでした。
「松山-羽田路線」の予約率もわずか40%ほどと、静かな立ち上がりとなりました。
この傾向は、県内の観光地でも同様でした。

“サイクリストの聖地”として知られる「しまなみ海道」。
その拠点となる今治市のサンライズ糸山には、多くのサイクリストの姿が見られましたが、目立ったのは、松山市など県内からのサイクリストでした。

一方、“木蝋と白壁のまち”内子町では、大阪、徳島、奈良など県外からの観光客の姿もありましたが、東京からの観光客は、まばらでした。

■愛媛を代表する観光地、道後の様子は

10月1日に松山市がスタートさせた道後温泉の「待ち時間表示サービス」。
道後温泉本館などの予約状況がリアルタイムで確認できる情報サイトです。

このサイトで10月の平日とこの週末を比べてみました。
その結果、10月1日(木)午前10時も10月4日(日)午前10時も、共に待ち時間は“0分~15分”と、違いはなく、本館では目立った混雑はありませんでした。
一方、道後のホテルや旅館はどうだったのでしょうか。

老舗旅館「大和屋本店」です。
この週末、客室は満室でしたが、東京からの宿泊客が占める割合については、10%程度にとどまったということです。(例年は30%程度)
それでも東京からの宿泊客は、9月から10月にかけて30%ほど増加しているそうです。

■10月1日から「地域共通クーポン」もスタート

「GoToトラベル」の“東京追加”と同時にスタートしたのが、「地域共通クーポン」です。
「GoToトラベル」では、旅行代金の35%分が割り引かれ、15%分が旅行先の地域で使えるクーポンが付与されます。
「地域共通クーポン」は、土産物店、飲食店、観光施設、体験アクティビティ、交通機関などで使用できますが、税金の支払い、宝くじ、水道光熱費の支払い、金券の購入、カラオケ、ライブハウスなどには使用できません。
この「地域共通クーポン」を手にした観光客を取り込もうと対象店舗では、様々な知恵を絞り、競い合っています。

■「地域共通クーポン」道後商店街では

週末、道後商店街の各店舗のレジでは、早くも「地域共通クーポン」が飛び交っていました。
このクーポンを店で利用してもらうためには、各事業者が感染対策を取った上で、事前に申請をする必要があるため、道後商店街組合が煩雑な手続きを一括して行いました。
これにより、道後商店街のほぼ全ての店舗でクーポンが使用できるようになっています。
こうした中、ある仕掛けで初めての週末に挑んだ店もあります。

道後商店街の土産物店「十五万石」です。
この店では、1枚1000円のクーポンをおつりがでないよう無駄なく使ってもらうために、通常価格1242円のお菓子セットを1000円ポッキリで販売しました。
こうした取り組みが消費者の心理を掴み、週末の売上のうち、クーポンの売上が、全体の約60%を占めたということです。
なお、この「地域共通クーポン」を含む「GoToトラベル」の終了日は、2021年1月31日までとなっています。(修学旅行のみ終了日は3月15日)

■愛媛から東京への客足は?
この週末、東京発着が追加されましたが、松山市に本社を置くフジトラベルサービスでは、愛媛から東京への旅行客は昨年比10%にとどまり、急激な回復は見られなかったということです。

例年、東京を目的地とする旅行は、全体の20%を占めているため、巻き返しを図るためにも東京行きの旅行客を取り戻すことがポイントとなります。

新型コロナの影響で苦境に立たされた県内の観光業の巻き返しに向けた切り札として期待される「GoToトラベル」“東京”追加と「地域共通クーポン」利用開始。
愛媛以外の都道府県全てがライバルとなる中で、いかに地域間競争を勝ち抜いていくのか、戦略やアイデアが試されます。

※次回記事更新は、10月15日(木)を予定しています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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