コロナ禍でのDV

オピニオン室

コロナでの外出自粛や休業などによる不安やストレスで、全国的にDV相談が増えているといわれています。
全国の配偶者暴力相談支援センターでは、昨年4月比で約3割の相談件数の増加となりました。

一方、愛媛県内で夜間電話相談などにあたっている愛媛県女性保護対策協議会の石丸世志副会長は「愛媛県も増えてはいるんですが、そんなに急に DV 相談が増えているという感覚はありません」と前置きしたうえで、こう続けます。

「私たちはずいぶん前から心配していることがあります。愛媛県の DV の相談件数というのは全国的にも少ないと感じておりました」―。

(愛媛県女性保護対策協議会 石丸世志副会長)

石丸さんによると、平成30年度の愛媛県のDVの相談件数は642件。四国では、徳島県が2079件、香川県は669件、高知県は880件あったといいます。
愛媛県との人口比で見ると、香川は愛媛の2倍の相談件数、高知は2.6倍、徳島はなんと6倍もの相談件数になります。

一見、愛媛県内での深刻さはそうでもないと捉えがちですが、ここに愛媛特有の県民性の問題が潜んでいるのではないかと指摘します。

「愛媛県の女性は、相談しないで自分の中に抱えている方もたくさんいるんじゃないかと思っています」―。

石丸さんは、相談しない理由として、自分がDVを受けているという事実を認めたくない、家族の影の部分を知られるのが恥ずかしい、そして、相談することで“非難”をされるのではないかという不安、が考えられるといいます。

“非難”。DVを受けている被害者に対しての“非難”とはいったい何なのかを問うと、意外な答えが返ってきました。
「例えば、そんなことをされてあなたはどうして家から出ないの?どうして離婚しないの?どうして逃げないの…。そう言われることが、非難されていると感じてしまうのです」―。
DV を受けている当事者にとっては、どんな些細なことばでも恐怖になってしまうと指摘します。
そして、日常的に暴力を振るわれ続けることにより、辛いという感覚が麻痺し、暴力に対して、このぐらいは暴力じゃないと、自分に思いこませ、自分だけ我慢すればいいんだと思ってしまっているのではないか、と。

「DV のある家庭は、友達、親戚といったつながりを制限され関わりを切られて、どんどん社会的に孤立してしまう場合もあります。孤立してしまっている家族に対して、私たちには力になるよというサインを出し続けることが必要だと思います」と、石丸さんたちは60年以上もつづく女性の支援活動を支えています。

(愛媛県女性保護対策協議会 森山加代子会長)  (60年以上続く会の機関誌「よあけ」)

愛媛県女性保護対策協議会の女性のための夜間電話相談は、089-927-3490 月~日 18:00~20:00となっています。
また、DV相談が急増しているいま、国が全国規模で展開する24時間電話相談「DV相談プラス」は、0120ー279―889(つなぐはやく)です。SNSやメール相談にも応じています。

愛媛県女性保護対策協議会の石丸世志副会長へのインタビューは、7月29日(木)ニュースな時間16:35頃から放送します。

ところで、四国内でも徳島の相談件数がとびぬけて多いのはなぜなのか。
相談件数が多いということは、悩みを一人で抱え込まず、“現状を変えるための第一歩”を踏み出した人が多い、という捉え方もできます。

実は徳島県は、徳島県経営者協会の会長、徳島商工会議所の会頭、徳島経済同友会の代表幹事と、主要な経済団体のトップが女性という、先進的な女性活躍県でもあります。女性がきちんと声を上げ、助け合い、悩みをひとりで抱え込ませない、人としての尊厳を傷つける行為にNOと言える文化があるのかもしれません。

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この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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