第71回「GoToトラベル」道後への影響は・・・

オピニオン室

■「GoToトラベル」スタート

2020年7月22日。
紆余曲折を経て、政府の観光支援事業「GoToトラベル」がスタートしました。
この「GoToトラベル」。
新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減し、苦境に立たされている観光・運輸業やイベント・エンターテインメント業、飲食業などを支援するための国の消費喚起策「GoToキャンペーン」一環です。
「GoToキャンペーン」では、既述の「GoToトラベル」のほか、「GoToイート」、「GoToイベント」、「GoTo商店街」の4つの事業が予定されています。

■「GoToトラベル」の仕組みは?

「GoToトラベル」では、1人1泊、2万円を上限に旅行代金の最大50%が補助されます。
(宿泊数や利用回数に制限なし)
補助の50%の内訳は、35%が旅行代金の割引きで、残る15%が土産物店などで使える地域共通クーポンが9月1日以降に配付される予定となっています。
では、具体例を見てみます。

【宿泊旅行の場合】

この場合、セット代金の全体が割引対象となります。
(宿泊に準ずる夜行フェリーや寝台列車にも適用)
しかし、個人で手配した交通機関は、対象外で、この場合、宿泊代だけが補助対象です。

【日帰り旅行の場合】

この場合、往復乗車券などの移動と、観光体験がセットになったプランが対象です。
(JR往復乗車券と日帰り温泉のセットや、高速道路周遊パスと体験型アクティビティのセットなど)

※宿泊旅行も日帰り旅行も旅行代理店や宿泊サイトを経由して申し込む必要があります。

■愛媛最大の観光地・道後への影響は…

ホテルや旅館などの宿泊業者が「GoToキャンペーン」に参加するためには、感染防止対策を取ることが条件となっています。

道後温泉地区の大規模ホテル「道後プリンスホテル」では、7月23日にリニューアルしたばかりの大浴場でも至る所に新型コロナ感染対策が取られています。

この大浴場ですが、元々、パウダールームを“8か所”設置しようと計画されていましたが、感染対策として利用者間の距離を広く保つために“7か所”に変更しました。
また、浴室の混雑状況を一目で確認できるスマートフォンのシステムを導入。

朝食バイキングは、料理の3割をあらかじめ小鉢に盛り付けておいて、客がトングを使用する際には手袋を着用します。

道後プリンスホテルの河内社長は、「GoToトラベル」について、「アクセルを踏みながらブレーキを踏まなければいけないので、きちんと訴えてお客様にお越し頂きたい。制度の利用方法についても少し不明な点があるため、早く説明会を開いてほしい」などと、期待感を示す一方で、戸惑いもにじませていました。
制度スタートから1週間が経ち、このホテルではキャンペーン対象の宿泊事業者として仮登録を済ませましたが、本登録に至っていないということです。
そのため、29日の時点で、宿泊客に宿泊証明書を発行して、後日、宿泊客が事務局に申請する形を取らざるを得なくなっています。

■道後では“独自キャンペーン”も
新型コロナの感染拡大により、県外からの宿泊が厳しい状況となっているため、道後温泉旅館協同組合は、7月20日から8月31日まで「地元道後温泉に泊まろうキャンペーン」を独自に展開します。
愛媛県在住者を対象に、宿泊料金の割引やチェックアウト時刻の延長など、キャンペーンに参加するホテルや旅館がそれぞれ特色あるサービスをプラスアルファで提供します。

道後の老舗旅館「大和屋本店」では、夕食の懐石料理と朝食付きで、通常1人1泊2万円程度のところをこのキャンペーンでは、約20%引きしていて、しかも県産品の土産が付いてきます。

さらに、国の「GoToトラベル」や愛媛県の宿泊代金1泊5000円割引と組み合わせることが出来るため、さらにお得に利用できます。

■全国で感染拡大 初の1,000人超
7月に入り、東京都では、30日に過去最多となる367人の感染者を確認するなど、連日200人を超える新規感染者が出ています。
また、全国的に見ても29日には、岩手県で初めての感染者を確認したほか、全国の感染者数が初の1,000人超えとなる1,305人(NNN系列まとめ)を記録するなど、緊急事態宣言時を大きく上回っています。

愛媛県内でも7月20日に53日ぶりとなる感染者を宇和島市で確認したあと、今治市、松山市、新居浜市において、相次いで感染者が出ています。
こうした事態を受け、中村知事は、今後も県内で散発的な感染が発生することは避けられないとした上で、感染の拡大防止と経済の活性化を両立するため最も重要なのは、「1人1人の感染拡大回避行動」だと訴えました。

「GoToトラベル」をはじめとする「GoToキャンペーン」は、観光業を筆頭に、疲弊しきった各種産業の起爆剤として期待されています。
その一方で、道後の観光関係者からは、「旅行客に現金の補助が出たとしても、潤う観光地とそうでない観光地で差が出るし、潤う業種とそうでない業種でも差が出る。それならば観光関係者に直接経済的支援をしてくれるほうが助かる。そうでないとこれから先、経営が立ち行かなくなる」などといった厳しい意見もありました。
全国的に感染が拡大する中、経済対策として、この大型キャンペーンが安全・安心に運用されるよう、しっかりとした国のリーダーシップが求められています。

※次回記事更新は、8月6日(木)を予定しています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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