オンライン時代の“救世主”

オピニオン室

「ウィズコロナのなかで、地元の中小事業者が生き残っていくには×IT(かけるIT)は必要。ITは高いものではなく、使われるものではなく、ITを“使う”というリテラシーを高めたいですね」-。

テレワークやオンライン会議があたりまえのようになっている今、困っている 企業の救世主のごとく、引く手あまたとなっているのが(株)エンカレッジ社長の玉野聖子さんです。
オンラインシステムのひとつ「Zoom」の使いかたをはじめ、SNSやWebを活用した 情報発信の方法、オンラインでの企業の採用活動や学生の就活、パソコンスキルの基本まで、IT関連の講師としてあちこちから声がかかります。

(事務所でのオンライン会議)

取材に訪れた日も、朝は、今後業務提携を検討している 岡山の企業とのオンラインミーティング。取材後は大学での講義、夜は鬼北町に出向き、業務改善のコンサルティングと、八面六臂の忙しさです。

「仕事が趣味」と明言し、「同じことを続けるよりも、違うことにチャレンジするのが好きなんです 」と笑う玉野さん、IT関連のほかにもキャリアコンサルタントとしての人材育成や 研修講師、司会業など幅広く活躍しています。

玉野さんは、大学卒業後、南海放送にCapyとして入社。物おじしない性格と人懐っこい笑顔で、すぐに人気リポーターになりました。
結婚退職し、関西で専業主婦として6年間過ごします。

(“もぎたてテレビ”のリポーターとしても活躍)

やがて愛媛に帰郷し、フリーアナウンサーとして、結婚式の司会をしたときのこと。
式場の担当者から放たれた一言は、「6年間専業主婦をしていたら、使い物にならん」―。

スムーズに進行をしていたはずなのに、なぜなのかと問うと「花嫁の花束贈呈のとき、両親が泣かなかった。泣かさんようなナレーションはいかん」と。
これまで神戸のホテルなどで、時折司会をしていて、スマートな進行に慣れていた玉野さんにとって、驚きのことばでした。

「人格否定の言葉だったけど、“生きていくためには自分に何か武器を身につけなければいけない”と思ったんですよね。しゃべりの仕事と、何かもう一つ、両輪になるものをしたいと。」

1999年。32歳でパソコン教室に通い始め、初めてパソコンの電源を入れた玉野さん 。当時、エクセル3級、30時間で15万円のレッスン料でした。主婦にとっては大きい15万円です。
「でも、受けない選択肢はないと思っていました。受けたら面白くて。次は2級、1級と資格を取りました。」
毎日通っていると、教室の講師から「教える側にまわらない?」と声をかけられインストラクターになります。
当時はインターネットが一般家庭にも普及し始めたころ。パソコン教室は大盛況で、講師不足の状態です。大勢に教えるうちに、ちゃんとしたインストラクターの証明が欲しくなり、マイクロソフトのオフィシャルトレーナーという資格を取りました。
当時、ママさんトレーナーは珍しく、マイクロソフト社オフィシャルサイトのトップページにも顔写真が掲載されるなど、注目されました。

講師をするうちに、初心者がほぼ躓くポイントなどがわかり、それらをまとめた本を執筆。800ページにも及ぶこの本は、すぐに完売となったそうです。

(「逆引きExcel 2003/2002/2000 」玉野聖子著)
(その他の著書:共著)

まさに、時代の先を読むビジネス展開をすすめているように見える玉野さんですが、
「たまたまの“めぐり合わせ”なんですよ(笑)。ただし、そこで得たものはモノにしようと。大学時代に古文書の研究をしたことも、アナウンサーになりたくてアナウンスの猛勉強をしたことも。アナウンサーになれなかったのは挫折だったけど、Capyとして、いろんなところにインタビューに行けた。挫折も失敗も自分だし、過去の経験をないものにするのではなく、どれだけミックスして今の自分を作れるのかという積み重ねです」と語ります。

その経験を生かして、起業をサポートするアドバイザーとしても活躍する玉野さん。最近は、自分の能力をどこかで生かしたい、スモールスタートで起業をしてみようかという 女性が多くなったと言います。
「ただ、勝手に自分で退路を作っている人がいるんですよね。これがダメでも、私には家庭がある、この仕事がダメでも家族がいるから大丈夫という…。 “自分に言い訳を作らない”というのが大事です」とアドバイスします。

聖子さんがCapyとして活躍していた頃は、「まだ嫁に行かんのか」「結婚したら会社を辞めろ」など、働く女性にとって今では信じられないくらいの酷い状況がスタンダードでした。
そんななかでも、聖子さんは、決して愚痴や文句、ネガティブなことは口にしなかった印象があります。
30年後の聖子さんは、厳しい言葉や失敗、挫折もすべて“いまの自分をかたち作ってくれるもの”ととらえ、どんな環境でも明るく開拓する、素敵な経営者になっていました。

玉野聖子さんの「オンラインシステムを上手に使いこなすヒント」は、あす7月23日(木)
の「ニュースな時間」16:35頃から放送します。
※ラジコなら放送後1週間、いつでも番組を繰り返しお聞きいただけます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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