世界に拡がる”愛媛産”グループウェア

オピニオン室

「私たちの製品が、先生の働き方改革にもつながって、それが子どもたちに還元されていくことが、いちばんの目的です」-。

企業内で、スケジュールを確認したり、情報を共有したり、ネット環境があれば、外に出ていても情報につながることができるグループウェア。
いまや企業内のライフラインのひとつともいえる存在です。

忙しい教職員の分野でも、グループウェアが活用されています。
愛媛県内の公立学校でのシェアは約7割。愛媛で生まれた学校専門のグループウェアは、いま、県内はもとより、全国・世界に広がっています。

「職員室に入ると、先生方が情報を共有する黒板があったと思うんですが、あれがパソコンのシステムとして使えるというイメージです」-。

※グループウェア「ミライム」の画面の一部

開発したのは、松山市の情報システム企業、株式会社アイ・エヌ・エス(松山市空港通1)です。30年ほど前の”パソコン通信”が認識され始めたころに、システム開発やメンテナンス・サポートを行う会社として設立しました。

 

「15年前から学校のパソコン、IT業務をサポートする業務をしていたのですが、かかわっている先生から、学校の情報が共有できなかという相談を複数頂いて、それでなんとかできないか、言われるがままに作ったというのが正直なところです。」

〈株式会社ミライム 松下真也社長〉

システムを作り、試用してもらい、厳しい意見をもらいながら制作したのが学校専門のグループウェア「ミライム」です。

ユーザーが、全国・海外にも広がっていることから、2017年に「ミライム」を扱う部門を、株式会社として独立させました。

企業用グループウェアと教員用の違いは、企業は社員一人一人が自分で情報を登録していく「個人を主体」としたもの。学校の場合は、学校全体で物事が動いていくので、先生自身が自分の予定を決めることはあまりなく、「組織を主体」としたフレームになるといいます。

愛媛県内の公立学校で約7割のシェア。新しいものに対して「慎重すぎる」行動をとるともいわれる愛媛で、どのように広がっていったのか…。松下社長に問うと、ひとつは、現場の声からスタートし、先生や教育委員会の声をひとつひとつ反映させて構築していったことといいます。
そして、もう一つのポイントは「人事異動」。

「松山市であれば、松前町や東温市など市町村を超えた人事異動があります。動いていくなかで、先生の口コミが長い期間を経てじわじわ広がっていったのではないかと思います」-。

確かに、3~4年で異動をする先生方にとって、新しい職場で触れるグループウェアが、その都度違うと、またゼロから習熟する必要があるなど、余計な手間がかかってしまいます。前の職場で使い慣れたシステムだと、学校が違ってもスムーズに使えます。

さらに松下さんは「使い始めるまで、なるべく簡単に。年輩の先生方ほど率先して使っていただけるようなつくりをめざしています」といいます。
学校に限らず、ITシステムを導入する際の課題点として、若手と古参のITスキルに対する「なじみ具合の差」があります。
古参社員が「苦手意識を持たない」ようなしくみをつくっていくのは、さまざまな業種に共通することなのかもしれません。

※従業員5人で、横浜にも拠点を持つ(株)ミライム

全国でも教育熱心な県として知られる愛媛で、多くの学校が取り入れているグループウェアの評判は、口コミを通じて全国に広がり、現時点で全国32都道府県、約2000校が導入。さらには、中国、ベトナム、インドネシア、シンガポールなど、世界の日本人学校にも広がりを見せています。

「先生の本分は子供と向き合うということが一番です。そういった時間を作り出せるように余分な時間を削減することが目的です」と語る松下さん、“愛媛で生まれたグループウェア”であることを大切にしながら、子どもたちにいい環境を提供できるよう、ミライムのブラッシュアップは続きます。

ミライムの松下真也社長へのインタビューは6月18日(木)の「ニュースな時間」16:35頃から。

株式会社ミライム(松山市空港通1丁目)

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この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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