社長のミカタ

オピニオン室

「お化け屋敷って怖いじゃないですか。何が出てくるかわからないから怖いんです。じゃあそこに電気をつけよう、そういうことが私たち専門家の役割なんです」-。

コロナの影響で、経営が厳しくなったり破綻する企業が多くなっています。特に地方の小さな企業はその波を大きく受けてしまいます。
南海放送ラジオ「社長のミカタ(日 16:00~)」でプレゼンターをつとめる、弁護士法人たいようの吉村紀行所長は相談の現状をこう話します。

「飲食店は、売り上げが蒸発している状況。それでも歯を食いしばって店を開いている方も、やむを得ず閉じる方も苦渋の決断です。パートアルバイトはやめてもらい、賃料は大家さんに交渉して下げてもらっても、何百万という固定費が毎月出る。それで心折れそうになって相談、という方が多いですね。」

吉村弁護士によると、いま、地銀の融資担当者は「自分たちが何とかしなければならない」と使命感を持っている人が多くなっているようで、さきの相談者には「洗いざらいさらけ出し相談するよう」アドバイスをしたところ、融資を受けられたと言います。

今まで順調に通帳の中に入っていたものがどんどんなくなり、いつゼロになってしまうのだろうという、経営者の恐怖。
このままだとどうなるのか、破産するかどうか、今後の手続きは、補償は、家族は…。
経営者にとってもっとも怖いことは、“わからないこと”なんですよ、と吉村さん。

「お化け屋敷って怖いじゃないですか、何が出てくるかわからないから怖いんですよね。じゃあそこに電気をつけようよ。こういう現状ですよ、立て直す方法もありますよと、わかっていることをいくつか見せていくと、疲れ果てた顔色がだんだん変わっていくんです」

そして、経営者にしても従業員にしても、相談する先や、励ます人の存在があるかどうかが最も大事だと話します。
(いま日本弁護士連合会、愛媛弁護士会では、コロナの影響に伴う無料法律相談も受けているそうです。)

 

京都大学法学部で国際政治学を学んでいた吉村さんは、阪神淡路大震災のボランティアで何もできない自分に気づき、誰かの役に立ちたいと弁護士を目指したそうです。

いま、事業再生をメインとしながら、2011年から続くラジオ番組「社長のミカタ」では、200人以上の経営者にインタビューをしてきました。

コロナ禍のみならず、破産か再生か、ぎりぎりのところで会社の明暗を分けるポイントはどこかと問うと、
「経営者の気合いだと思います。経営者は学歴はいらない、根性だけ。腹を決めて、自分が何が何でもやる、という会社は潰れません。金融機関にお願いに行く気力も出ない、でも頑張って扉を開けていく。従業員には、どんなに苦しくても笑顔で、大丈夫、明日は明るくなる、と言える根性、気合。それだと思う」―。

経営者の魅力的な素顔を引き出す「社長のミカタ(日 16:00~)」、今週も素敵な社長が登場します。
5月26日のニュースな時間16:40頃から放送した吉村紀行弁護士へのインタビューは、ラジコのタイムフリーで、放送後1週間お聞きいただけます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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