「とりあえず会社に出てこなくていい」とは言ったものの、帰りがけに山ほどの荷物を持たせて「とりあえず読んどけ」としか指示できない上司。
普段、上司からの指示待ちで仕事をしていたため、いざテレワークになったとき、上司から的確に指示が下りてこないと、何をしていいかわからない部下。
コロナ自粛で多くの会社でテレワークが進みました。
とりあえず走り出してなんとかやっているという状況のところが大半だと思いますが、さまざまな課題も見えてきたようです。
働く人のメンタルヘルスやキャリア形成などを支援する日本産業カウンセラー協会常務理事の田中節子さんは「管理職は、ふだんから仕事の洗い出しや切り分けをしていなかったため、テレワークで何をしてもらうかということに戸惑っている。働く側は“会社に行かなくてもいい私の仕事って、いったい何なんだろう”とキャリアに不安を覚える人が多くなっているようです」と言います。
(田中節子さん)
「会社に行くこと」がイコール「仕事をしている」という価値基準ではなくなりつつある今、仕事の明確な成果が求められるようになり、これまでの仕事のやり方に対して漠然とした不安を抱える人が増えてきているようだと、田中さんは指摘します。
かつて南海放送ラジオのプレゼンターとしても活躍していた田中節子さんは、愛媛の産業カウンセラー界を牽引してきた一人でもあります。いまは本部(東京)の役員を務めていて、松山と東京を行き来する生活をしています。(コロナ禍でこの2か月は帰松できてないそうです)
日本産業カウンセラー協会本部(東京都港区)
そんな中、日本産業カウンセラー協会は、ゴールデンウィーク期間中、オンライン(ZOOM)を使っての無料キャリアコンサルティングを初めて企画しました。
そもそもカウンセリングとは、相談者の表情や声のトーンなどを感じ取る「対面」が基本ですが、田中さんは、この初の試みで、オンラインでも十分コミュニケーションが取れることが分かった、と言います。
全国から67人からカウンセリングの申し込みがあり「自宅待機がなくなった後、このまま仕事がなくなるのではないか」「私は会社に必要とされているのか」など切実な声がきかれたそうです。
そしてキャリアコンサルタントと話をするうちに「自分の仕事や人生について考えるいい機会になった」「自分を知ることができた」といった声もあったといいます。
「今後、カウンセリングもこの方向にいくかもしれないと感じました。これまでは、カウンセリングを受けたくても、近くにカウンセラーがいなくてあきらめていた方なども、距離や時間を問わず関われる。必要とされると実感しました」-。
さまざまな可能性を感じさせてくれるテレワークですが、田中さんは、便利であるだけに、手を抜いてはいけないポイントを強調します。
たとえばメンタル不調を抱える社員に対して、「家でだったらできるだろう、というのは危険。在宅だから仕事がラク、というのは違う。籠りっきりになった孤独感にメンタル不調を発症していくという懸念もある」と警告します。
また「“これやっといて”だけでは指示された側は不安になる。進行状況や体調具合をたずねるなど、こまやかにやりとりする配慮も必要」とします。
そしてストレスがとても強くなったときは、誰かに相談することが大事だと話します。
「相談なんて…と思うのではなく、“まだ自分には相談する力がある”と思ってください。ストレスが大きくなると相談する力さえ奪い、自分ではどうしようもなくなります」―。
ばたばたの中スタートしたテレワーク、この経験を生かし、今後はテレワークをうまく取り入れながら、会社で会って仕事をしてもテレワークであっても、いい働き方ができるようになればいいのではないかと感じました。
きのう5月19日(火)の「ニュースな時間」16:35頃から放送した田中節子さんへのインタビューは、ラジコのタイムフリー機能でお聞きいただけます。
※日本産業カウンセラー協会HP