持ち帰り半額!対コロナ「あり得ない事業」

ニュース解説

「これまでの役人の発想ではあり得ない事業」

愛南町商工観光課長の兵頭重徳さんが苦笑いします。

「愛南町は県内で一番早くコロナのダメージを受けた。町民のストレスもたまっている。思い切った手を打ちたかった」

そこで考えたのが、町民が飲食店で弁当、仕出し、オードブル、スイーツ・・・、なんでもテイクアウトした場合、値段が半額になるという取り組みです。

残り半額は町が支払います。

驚いたのは、その太っ腹ぶり!

上限が1万円!!

例えば、家族4人で2,500円ずつの夕食を仕出しで頼み(つまり1万円)、”おうち”で食べた場合、5.000円で済みます。

取材した日、町内の食堂で、南予支局の記者と2人でお昼ご飯を食べました。

☆私のお昼 釣りアジの唐揚げ定食(お刺身付き) 1,600円

☆支局記者のお昼 タイかつ丼定食(お刺身付き) 1,100円

合計2,700円ですが、テイクアウトした場合 、町民であれば 支払いは1,350円になります。

◆町内で感染確認、客足途絶え、売り上げ75%減

足立ゆかりさんは愛南町で55年続く、食事処「なにわ」の経営者です。

3月2日、愛南町でコロナ感染者が確認されたと報道された時、「えっ!まさか」とは思ったものの、なにより驚いたのは、翌日からパタリと客足が途絶えたことです。

昼も夜も約40人の来店で、いつも満席だった店内が、2週間ほど1日数人のお客しか来なくなりました。

「地域で感染者が確認されただけで、こんなに影響が出るとは・・・」(足立さん)。

3月、4月の歓送迎会のキャンセルも相次ぎ、3月の売り上げは例年の30%減、4月は75%減。パート従業員の勤務時間を短くしてもらうなどして、しのいでいるといいます。

◆今、最も必要なのは”現金”

売り上げが上がらないと、現金で行う日々の仕入れに困ります。

さらに国の政策もあり、去年の夏からスマホでの支払いが増えていて、まだ慣れていないキャッシュレス決済の普及が、”現金繰り”をさらに難しくしている面もあると話します。

◆『節約』のアイデアは浮かぶが、『使う』アイデアは浮かばない・・・

”消滅した売り上げ”。

コロナ被害の”直撃”を、県内で一番早く受けた愛南町は、思い切った売り上げ対策に乗り出します。

ところが立ちはだかったのが、意外な『節約』の壁。

「合併以来、2万円、3万円の予算を節約することばかり考えてきた。いきなり、思いっきり『使え』と言われてもアイデアが浮かばなかった」(兵頭さん)。

兵頭さんによると、出たのは「広報誌に100円の飲食割引券を付けてはどうか」といった”みみっちぃ”アイデアばかり・・・。自虐気味に苦笑いします。

そこで参考にしたのが、姉妹都市の兵庫県丹波篠山市の『半額グルメ事業』でした。

その事例を参考に、町内、約40店舗で町民が1,000円以上の飲食をテイクアウトすると、1万円を上限に、その半額を補助するという事業をまとめました。

「なにわ」の場合、どのメニューも、汁もの以外はテイクアウトに対応することにしています。

1.事業予算は総額3,000万円。つまり、町内では総額6,000万円の経済効果が見込める。

2.町民に”おうち”で外食を楽しんでもらえば、ストレス発散などの効果も期待できる。

一粒で二度、美味しい税金の使い方といえます。

4月28日に予算を専決処分し(議会審議を後回し)、GWを挟んで、きのう(18日)から実施したスピード感も、町にとっては異例の速さ。頑張りました。

◆ ”住民に近い” 地方自治体の能力が問われている

日本では、市町村は予算も権限も少なく、どこか国より”下位”に位置付けられているように感じますが、住民に近いのは圧倒的に市町村です。

アベノマスクや国民給付金のドタバタなどにみられるように、国は国民のニーズに直接、寄り添うことは非常に不得手です。(そもそも、そういう存在でないともいえる)

住民は今、自分に最も身近な地方自治体の”存在”と”大切さ”に、気づいているのではないでしょうか。

コロナ問題は、地方自治体にとって『歴史的危機』ではありますが、地方自治体の得意な”住民の本当のニーズに寄り添った”事業で、住民に信頼される、『歴史的転換点』であるようにも思います。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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