妊婦さんにマスクを!新居浜の”粋”な配慮

ニュース解説

新居浜市では年間、約800人の妊婦さんに母子手帳を交付するそうです。

新型コロナウイルス問題で、妊婦さんは不安を抱えています。

「万が一、感染した場合、重症化するのではないか?」「出産に悪い影響があるのではないか?」。

国は4月、こうした不安に応えようと、「感染が妊婦に与える影響」というお知らせと共に、布マスク2枚を自治体を通じて配布する取り組みを始めました。

ところが!

配布したマスクに虫や髪の毛が混入していたなどの苦情があり、現在、配布がストップしています。今月1日、厚生労働省は自治体から約4万7000件の返品があったことを明らかにし、今月中旬に配布を再開する方針を示しましたが、取材の時点(4月30日)で新居浜市に、次のマスクがいつ届くのか、分かりません。

「マスクが手に入りにくい状態なので、妊婦さんに手厚い手当をしたかった」。

新居浜市は、マスク配布を国に代わって継続しようと、使い捨てマスク50枚を妊婦さんに届ける取り組みを行っています。

SNSを通じて、妊婦さんの「送られて嬉しい」という声が伝えられるなど、評判がいいということです。(新居浜市関係者)

◆なぜか上手くいかない・・・、 国の布マスク配布

新居浜市に、国から妊婦さん用の布マスクが届いたのは4月16日、440枚(220人分)ありました。

市の子育て世代包括支援センターは直ぐに、出産の迫った妊婦さんを中心に、150人分の布マスクを送付しました。(国から届いた妊婦さん用の布マスク・写真下)

ところが、「省をあげて、妊婦の方々の安心・安全の確保に全力を尽くす」はずだった布マスクに”虫や髪の毛が混入していた” ”黄ばみや汚れがある”といった苦情が寄せられました。

厚労省は自治体に対し、「配布を控える」よう、お願いを文書で通知(4月16日付)、新居浜市でも妊婦さんへの布マスクの配布事業の見通しが立たない状態となっています。(新居浜市に異物混入などの苦情はなかった)

◆「妊婦さんに、なんとかマスクの手当を」

困ったのは自治体です。

新居浜市福祉部保健センター所長の東田寿重さんは「マスクが手に入りにくい状況だったので、妊婦さんには手厚い手当をしたかった。何とか方法はないかと考えた」と話します。

新居浜市ではコロナ問題を受け、危機管理課が ①医療・高齢者福祉施設 ②小中学校・幼保育園 ③妊婦さんなどが必要としているマスクの総数を、担当部署を通じて把握しているといいます。

そして、産業振興課などと連携し、企業を通じて、マスクが手に入らないか情報収集と確保に努めているということです。

危機管理課長の竹林栄一さんは、「企業と結んだ、災害時の物資供給に関する応援協定が役に立っている」と話します。

「本来の趣旨とは違うが、協定を通じて日ごろ、企業とお付き合いをしていることが、今回のマスクの確保に役に立った」(竹林栄一さん)。

竹林さんによると、3月は確保が難しかったマスクですが、現在は5月いっぱいの必要数を確保し、配布計画も立っているといいます。

この結果、国からの布マスクの配布が中断しても、市が独自に妊婦さん一人ひとりに、使い捨てマスク50枚を届けることが出来るようになりました。

<新居浜市の妊婦さんへのマスク配布の経過>

4月1日  国が妊婦さんに布マスクの配布を始めると通知

4月16日  国から布マスク440枚届く→150人の妊婦さんに布マスクを配布

4月19日  国から「布マスクに異物混入」で配布を控えるよう通知

4月27日  新居浜市が独自に使い捨てマスクを妊婦さんに配布 ①布マスクをすでに送った150人 ②新たに285人 合わせて435人の妊婦さんに、それぞれ50枚ずつ

今後、母子手帳を受け取りに来た妊婦さんにも、使い捨てマスク50枚を手渡しで配布することにしています。

◆国の”善意”はなぜ、うまく国民に届かないのか?

国民がマスク不足で困っている。なんとかしてあげたい。

国の国民に対する”善意”は、なぜか、うまくゆきません。

①国民1人ひとりに布マスクを配る事業は、評判が芳しくなく(そもそも、いつ届くのだろうか?)、②妊婦さんに布マスクを配る事業は、中断を余儀なくされました。

そもそも国民は国に、マスクを配ってもらうことを期待しているのでしょうか?

疑問です。

*****

新居浜市には、地元企業からの”善意”のマスクの寄付が相次いでいます。

市が、妊婦さんに使い捨てマスク50枚を送った4月27日には偶然、地元企業から『マスクの内側清潔シート』の寄付があり、市は急きょ、使い捨てマスクに「シート」を同封して送りました。

こうした臨機応変な対応が出来るのは、地方自治体が国よりも、住民に”近い”位置にいるからです。

こうした住民との”距離”によって、国と地方自治体にはそれぞれ、得意な分野と不得意な分野があるのではないでしょうか。

国には、例えばマスクの生産要請や買い占めの排除など、自治体には困難な、大切な役割があるはずです。国は対応しようとしていますが、スピード感に乏しい印象は否めません。

コロナ危機は、1.地域住民が必要としてる公的サービス(補助)の把握、2.提供するスピード、3.変化に対応する臨機応変さ、については、国よりも地方自治体の方が適していることを証明しているのではないでしょうか。

妊婦さんへのマスクの配布の現状を取材して、そう感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(55歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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