ポツンと一軒、”臨時”布マスク直売所

ニュース解説

「マスクが買えない」「学校が始まったらマスクが必要なのに、どうしよう」。

マスク不足が深刻です。

そんな中、今治市の県道沿いに『布マスク製造直売』と書かれた看板が立ち、目を引いています。

多くの人が「一体、なに?」と近寄ってきます。マスクの販売所だと分かると、生地やサイズ、値段を確認し、多い人は家族用にと4~5枚買っていました。

ある主婦は「主人の職場はテレワーク出来る環境じゃないので毎日、マスクが必要。手に入らないので助かった」と話します。

販売されている布マスクは、すぐ裏にある縫製工場で製造され、今月10日から販売を始めていますが、取材の時点(23日)で買えるのは、この”直売所”だけです。ネット販売などはしていません。

◆そもそもはガソリンスタンドの”おまけ”にと・・・

タオルや婦人・子供服の縫製会社を経営する、白石憲司さん(55)。父親から引き継いだ白石石油店の社長で、自分の代から新たに縫製業をスタートさせました。

経営するガソリンスタンドと縫製工場は、道を隔てて隣りです。

今年3月ごろからタオル・婦人子供服 縫製部門の売り上げの減少が目立ち始めたといいます。特に、春に多いイベント用の特注タオルのキャンセルが相次ぎ、大きなダメージを受けました。

「このままだと、売り上げ4割減もあり得る」(白石さん)。

たちまち、縫製部門に13人いる従業員の仕事の確保をどうするか・・・という問題に直面しました。思いついたのがマスクの製造でした。

最初は、「ガソリンスタンドの常連さんに”おまけ”で配って、スタンドの売り上げ確保につながればと考えた」そうです。

◆マスク不足の深刻化。まず、地元の人にマスクを!

ところがマスク不足が深刻になり、それなら地元の人に広く使ってもらおうと、縫製工場前に即席の”直売所”をオープンさせました。

広くPRしたり、ネット販売などをしないのは、まずは近所の人、そして今治の人に使って欲しいと考えたからです。

◆タオル・婦人子供服で培った縫製技術をマスクに”転用”

取材すると縫製の技術が、布マスク製造に効果的に転用できることが分かります。

材料は主に4種類。

①ポリエステル生地 ②綿の生地 ③ゴムひも(耳にかける部分) ④ノーズフィッター(鼻の部分で型を整えるワイヤーのような素材)。生地は地元の問屋から、他は主にネット経由で仕入れるそうです。

マスクの需要増大で今、ゴムひもが品薄で、値段も通常の3~4倍するそうです。

これらを従業員がミシンで縫って、仕上げます。

相当に細かな作業で、私には”熟練の技”に見えます。

立体的に仕上げるのですが、見本(マニュアル)があるわけでなく、経験と勘?で、流れるように縫っていきます。

一個仕上げるのに10分かからないくらいのスピードでした。

恐らく、流れ作業は無理で(作業が分解できない)、一人が一個一個、手作業で作るしかないと感じました。

白石さんによれば、タオルや婦人・子供服の縫製は下請けに位置するため、利益率が低いということですが、マスクはそれよりは利益率がいいそうです。

しかし、本業の売り上げが減少しているため、従業員の「休業対策」(白石さん)というのが、本音ではないでしょうか。

コロナ問題の収束時期が見通せないため、在庫調整などの難しさもあると思います。

◆大人用1,200円、子供用900円

「学校で手作りマスクを勧められたけど、今、ゴムひもが手に入らない。母親同士で、”作れと言われてもねぇ”と困っていたところ。助かった」。”直売所”でマスクを買った女性が喜んでいました。

場所は今治市拝志4-3の県道38号沿い。ドライブスルーのように買っていく人もいました。ただ交差点近くで交通量が多いので、お気を付けください。

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GW休暇のため、5月5日、12日の担当回の解説記事の発信は、お休みさせていただきます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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