食べた”つもり”でまず、現金!僕らの経済対策

ニュース解説

八幡浜市の飲食店主らが、新型コロナウイルス問題による売り上げの激減に立ち向かおうと、「食べた”つもり”になって、まず現金」というユニークな、”緊急経済対策”プロジェクトをスタートさせました。

プロジェクトの中心人物の1人は、「八幡浜には『けんとまくり』という言葉がある。”見当をまくり上げる”というような意味で、要は、”四の五の言わずにやってしまえ!”ということ」と笑います。

売り上げ ”前年比8割減”という危機的な状況を「自分たちの力でなんとかしよう」という取り組みは、きのう(13日)、八幡浜市議会でも取り上げられ、市側から「補助を検討したい」との答弁も引き出しました。

地域の助け合い精神を背景にしたプロジェクトの意義と、スタートしてから浮かび上がった課題をリポートします。

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八幡浜と言えばちゃんぽん。有名店の1つで、土日には観光客らの行列が出来る『ちゃんぽん亭イーグル』の中広俊太さん(35)は、「土日の売り上げが、平日を下回るのは初めて」と話します。

中広さんは今回のプロジェクトの中心人物の1人ですが、「まるっきり観光客がいなくなった」「今、一日3万円売り上げるのがやっと」と話します。

一方、ホテルを経営する伊藤篤司さん(51)は、「3月は宴会場での歓送迎会が多く、飲食部門がホテル全体の売り上げの約半分を占める。しかし、その飲食の売り上げが前年比で8割減という危機的な状況」と話します。

こうした危機を乗り切ろうと立ち上げたのが、『コロナに負けんなや!つながる八幡浜プロジェクト』です。

プロジェクトへの参加店は3,000円、5,000円、10,000円の3タイプのチケットを発行します。

購入希望者は購入時点で、現金を店舗に支払います。そして、コロナ問題が落ち着いたら、チケットで飲食したり、商品と交換するという仕組みです。

つまりチケットを購入した人は、『食べた”つもり”になって、まず現金を支払う』仕組みで、店舗側は手にした現金を、すぐに家賃や人件費、材料費などに充てられるメリットがあります。

参加店は取材した10日時点で10店舗ですが、広がりを見せています。

◆アイデアのもとは”喫茶店のコーヒーチケット”

プロジェクトの背景には、個人店主や中小零細企業にとって、たちまちの資金繰りが緊急の問題という事情があります。

政府は、収入が半分以下に減った中小企業などには最大200万円、個人事業主に最大100万円支給するとしていますが、いつになるか、はっきりしません。

こうした中、プロジェクトの”前払いチケット制”のアイデアの生みの親、印刷会社経営の菊池史行さん(50)は、「喫茶店のコーヒーチケットから思い付いた」といいますから、驚きです。

さらに、その発想を即、行動に移すところに、八幡浜商人の”商人魂”を感じます。

こうした行動は、行政も動かそうとしています。

きのう(13日)、開催された八幡浜市議会臨時会で、このプロジェクトへの関わり方について問われた市は、担当者が「すでにスタートしている案件であり、今後、補助が必要になるなら検討したい」と述べました。

援助を待つのではなく、まず自ら計画を示し、具体的な補助(例えば、事務経費などが想定される)を引き出す点に、大きな意義があります。

◆”けんとまくったら”、色んな課題も・・・

地域の人々を中心とした、店舗への”信頼”と”愛着”を担保にスタートした前売りチケットですが、税理士らと相談すると会計上、結構、面倒くさい手間がかかることも分かってきました。

1.売り上げは、いつ計上するか?

少し専門的な話になりますが、イーグルのような個人店舗は、現金が手元に入った時(チケットを現金と交換した時)に、売り上げが計上されます。(現金を手にした時点→早い)

一方、ホテルなど法人経営だと、実際にコロナ問題が落ち着き、チケットで実際に食事をした時に、売り上げが計上されます。(チケットと交換した時点→遅い)

つまり、中広さん(写真・左/イーグル代表)は、伊藤さん(写真・右/ホテル社長)と違って、コロナ問題の最中に売り上げが、見た目上(会計上)、”上積みされる”という現象が生じます。

これは将来的に、補助金を受けにくい、という不利益につながる可能性も否定できません。

2.努力したものが”報われない”可能性も?

さらに、「収入が半分以下に減った企業・事業主に補助」という条件面にも、引っ掛かりがあります。

受け止めようによれば、努力して頑張った(売り上げを上げた)企業・事業主が、支給金を受け取れないともとれるからです。

いずれにせよ、①遅い ②分かりにくい(複雑)は、経済対策にはマイナスです。

◆取材を終えて・・・

取材中、中広さん、伊藤さん、菊池さんの3人が、深刻な現状にもかかわらず、深刻さを表情に出さずに説明するように私には感じました。

最後に、八幡浜の『けんとまくり』という言葉を教えてもらって、その理由を知ったように思います。

”グズグズせずに、やっちゃえ!” みたいな精神に、取材した私の方が救われた気がします。

ちなみに最後に、私が「なんで、そんな精神が八幡浜にあるんですかねぇ~?」と聞くと、1人が「八幡浜は、城下町じゃないからじゃないですか」と推測していました。

そういうのって、関係するんでしょうか?

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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