第56回「新型コロナ緊急事態宣言 愛媛への影響は」

オピニオン室

■安倍首相が緊急事態宣言を発令

2020年4月7日夕方、安倍首相が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言を出しました。
この宣言は、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもので、2012年の特措法成立後、初めての発令となりました。
対象地域は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県で、期間は、ゴールデンウィーク明けの5月6日までとなっています。
この7都府県が対象地域として選ばれたポイントは以下の3点。
①累計の感染者報告数
②感染数が2倍になる期間
③リンクが追えないケースの数(感染源が不明なケース)
4月7日時点での感染者数(NNN調べ)は、東京で1195人、大阪で481人などとなっています。
一方、福岡県は、199人と、対象地域とされていない愛知県や北海道と比べ、感染者の数は下回りますが、感染者数が2倍になるまでにかかった時間がわずか2.9日(東京5日、大阪6.6日)と全国最速。
また、感染源が不明なケースの割合も72%(東京68%、大阪50%)と、全国一となっていることから対象地域となったそうです。
一方、愛媛県は、4月7日時点で、10事例23人の感染者を確認していますが、いずれも首都圏や海外からの感染源が強く疑われるほか、事例ごとに封じ込めを行っていることなどから緊急事態宣言の対象に含まれていません。

■緊急事態宣言で暮らしの何が変わる?

安倍首相は、いまのままのペースで感染拡大が続けば、感染者数は、2週間後に“1万人”。1か月後には“8万人”を超えるという専門家の試算を示しました。
その上で、人と人との接触を最低7割、極力8割減らすことができれば2週間後に感染者を減少に転じさせることができると説明し、【外出自粛】を強く求めました。
では、この緊急事態宣言を受け、対象地域の暮らしはどのように変わるのでしょうか。
宣言の対象地域となった都府県の知事は、以下の措置が可能になります。
・不要不急の外出自粛の要請
・学校や映画館などの使用停止や制限の要請、指示
・医薬品などの強制収用
・食品や医薬品など物資の売り渡し要請など
このうち、外出自粛要請については、法的根拠が生じることになりますが、海外で行われているような都市封鎖、いわるゆ“ロックダウン”を行うことはしないとしています。
このため、公共交通機関の機能やスーパー、コンビニ、病院など、経済・社会活動を可能な限り維持しながら感染拡大を防止していくことになります。

対象の7都府県の対応も分かれていて、東京都は、休業要請する対象業種や施設を10日に発表し、11日の開始を目指します。
残る6府県は、民間施設に対する休業要請を当面見送る方針です。
ただし、この自粛要請については、罰則規定がないため、どこまでの効果が得られるのか不透明な状況です。

■地方への移動を謹んで欲しい

安倍首相は、緊急事態宣言が出された地域に向けて、【地方への移動を謹んでほしい】と呼び掛けました。
この発言は、東京や大阪などに進学や就職で出てきている若者などが緊急事態宣言が出されていない地域に帰省する動きが活発になっていることを受けたものです。
安倍首相は、「若者は新型コロナウイルスに感染していても症状が出ていないため、気が付かずに誰かにうつしているケースがあり、【もしかしたら自分も感染しているのではないか】という思いで、出来る限り現在の場所にとどまってほしい」と訴えています。

また、愛媛県の中村知事も「家族や友人等による対象都府県からの帰県・来県はできる限り控えて、止むを得ない理由で帰県した場合も極力外出を控えるなどの感染予防対策をして頂きたい」などと、感染拡大防止への協力を呼びかけています。

■やむを得ず帰省した場合の対応について
感染拡大地域から地方へ人が動く、「帰省のリスク」について、愛媛県立衛生環境研究所の四宮所長に聞きました。

四宮所長は、この「帰省リスク」について、「ウイルスを持っているのは人なので、移動に伴って日本中にウイルスが拡散されてしまう」と懸念しています。
3月下旬から4月上旬にかけて、感染者が全国で増えましたが、これは、転勤や進学などで、人の移動が増えたからではないかと考えられています。
愛媛県でも、県外からウイルスが入ってきて、感染者が出るケースがあったことから、四宮所長は、緊急事態宣言を受けての帰省によって感染が拡大する可能性を指摘しています。

さらに、四宮所長は、もっとも多い感染パターンに『家庭』での感染を挙げていて、「家庭での濃厚接触は避けようがないので帰省をしてしまうと家庭内で感染が広がってしまう恐れがある。やむを得ない場合以外は、避けた方がいい」と強く訴えています。

一方で、やむを得ず帰ってきた場合については、【密集・密閉・密接】のいわゆる【3密】を避け、なるべく外出しないことが大切だとしています。
愛媛県は、感染拡大地域から愛媛に戻った人に、2週間は不特定多数との接触を控えるなど、感染予防の意識を強く持ってほしいと呼び掛けています。

このまま国内で感染拡大が続くのか。
それとも終息に向かうのか。
重大局面を迎え、発令された緊急事態宣言。
国民生活に大きな影響を与えるため、感染拡大防止と共に実効性のある経済対策なども求められます。

※次回の記事更新は、4月16日(木)の予定です。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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