ちょっと見る目を変えてみたら

オピニオン室

「不登校の子どもは、今のように学校が休みの時はリラックスできているんです」-。

30年以上にわたって不登校や引きこもりの子どもたちをサポートしてきたカウンセラー長谷川美和子さんは話します。

長谷川さんが代表を務める「カウンセリングスペース 麦(ばく)の家」(松山市宮西町)。
スタッフが無償で提供している一軒家は、どこか懐かしい佇まいです。

50~80歳代の、資格を持つカウンセラーが13人。「おばあちゃんの家に来たみたいで落ち着く、ってよく言われるんですよ」と笑います。

長谷川さんがカウンセリング手法として時折使うのが箱庭療法です。
砂が敷かれた箱に、壁いっぱいの人形や動物、おもちゃなどの小物を、相談者の思うままに置いてもらいます。

砂(箱庭)の真ん中に、椅子に縛り付けられた子供のフィギュアだけを置く相談者、猛獣と木の陰に隠れるウサギを表現した相談者、幾重にも木だけを置いている相談者。その風景から、心に抱える問題に近づいていきます。

「どうしてもできない、という人もいます。そんな時は無理強いしない。少しずつ心をほどいていきます。トランプやオセロゲームでもなんでも、興味のあるものから」

個人カウンセリングに加えて、毎週水曜日は「BAKUの日」と題して、この場所をフリースペースとして開放しています。
10代から40代までの不登校・ひきこもりの若者が漫画を読んだりゲームをしたり絵をかいたり。
思い思いに過ごしますが、俳句や絵手紙、カラオケや料理など、テーマを決めてみんなで楽しむ時間も用意されています。

お昼には、スタッフ手づくりの具だくさん味噌汁やスープがふるまわれます。

「BAKUの日」は、ひきこもりから抜け出す糸口を見つけたい、そんな親の見学だけでも可能です。

のべ5000人がこの場所で、心を休ませてきました。
社会人になっても、20年以上通い続ける利用者もいるそうです。

 

長谷川さんは、春休みや夏休みになると、利用者が減ってくると言います。
「この子たちは、律儀なんです。親のお金をあんまり使っちゃいけないとか、お母さんが作ったものをそんなに食べたらいけないとか、学校に行かないのは悪い奴だとか。自分を追い詰めるくらい責めている子もいるんです。だからみんな学校に行っていない今は、罪悪感がすこし薄れる。今の状況も満更悪い面だけではない」―。

そして、今のこの時期を、マイナス面だけで捉えないでほしいと言います。
「きのうも相談者のおばあちゃんが、“共働きの息子夫婦がコロナで会社を休むことになって、久しぶりに家族で海までドライブしたって、孫が大喜びだったんですよ”と報告してくれました」と語ります。

「いまは大変な時。でも、子どもと協力して家の中を片づけたり、冷凍室をきれいにしたり。不自由も、ちょっと見る目を変えたら、家族が結束できるいい時間になりますよ」-。

長谷川美和子さんの出演は「ニュースな時間」毎週水曜日 午後4時35分頃から。今月は、「ストレングスカード」を使ったカウンセリング事例についてのお話です。

※カウンセリングスペース麦の家(松山市宮西町) 電話 089-923-4481(月ー金 10:00~受付)

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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