「ひとりで抱え込まないで…」こんな貼り紙を、公共施設や商業施設の女性用トイレなどで見かけた人は多いのではないでしょうか。
メッセージの送り手は「愛媛県女性保護対策協議会」です。
主に女性のための夜間電話相談で支援にあたっています。
「夫や交際相手からの暴力(DV)」「職場や近所の人間関係の悩み」「家庭内の心配事」「子どもに関すること」…さまざまな悩みに耳を傾ける相談窓口です。
行政機関かと思うような硬い名称ですが、63年前、売春防止法が制定された翌年に、「困っている女性を助けなければ」と愛媛の女性たちから声が上がり、全国でもいち早く設立された民間の団体なのです。
勇気を出してかけてくれた電話、しかし、長い間ひとりで抱え込んできた悩みはなかなか口に出せません。じっくりと長い時間をかけ、耳を傾け、話したくなるまで根気よく寄り添います。そして相談者の意向を確認しながら、暴力や危険から「逃げること」が大事だと判断すれば、児童相談所や婦人相談所などの保護施設につなぎます。
(森山加代子会長)
長年女性の支援にあたってきた森山加代子会長は、
「売春防止法ができたころは、逃れてきた女性を追って、男性が飛び込んできて怖い思いをしたことも多くあったと聞きました。今は、一時保護施設にいても、禁止している携帯電話でDVの夫に連絡を取ってしまう女性もいて、なかなか難しいところもあります」と語ります。
そして協議会のもう一つの大きな役割は、DVなどから逃れ一時保護施設で過ごしたあと、新しい場所で自立をはじめる女性たちへの支援です。
一歩を踏み出そうとしても…なじみのない場所で、知り合いもなく、生活する道具やお金も十分でない、自分にできるのか、不安と孤独で躊躇してしまう…そんな女性も少なくないのではないでしょうか。
(常務理事の石丸世志さん)
常務理事の石丸世志さんは、
「一人で生活するにあたって、部屋の中に布団やTVといった生活用品がないとき、協議会のメンバーに募って、生活に必要なものを提供することもあります。全く知らない地域で生活する場合は、地域活動のをしている人に顔つなぎをしたり、スーパーや病院の場所や働く場所の紹介をしたり。いつでも相談できるところがあるよ、という支援をしています」と語ります。
(年1回発行される機関誌は61号です)
独りぼっちじゃない。不安な時には声を聴くことができるし、足りないものは誰かが持ち寄ってくれる、まるで姉のような母のような存在はとても心強いのではないでしょうか。
(児童虐待防止のシンボル「オレンジリボン」と、DV根絶のシンボル「パープルリボン」を並べた、「Wリボンみきゃんバッジ」)
SNSでいつでも誰とでもやりとりできる時代ではありますが、石丸さんは「生の声」でつながる大切さを訴えます。
「人と人が“その時間につながっている”ことが大切。一つの言葉でも、どんな雰囲気で話しているのかわかりますから。だから電話で話してほしい」ー。
口に出せなかった悩みに寄り添ったり、社会に無理なく戻れるサポートをしたり、行政だけでは手の届かない部分を、60年以上も前から支援してきたえひめの女性たち。その活動の様子を、きょう(3月25日)のニュースな時間(18:25頃~)で放送します。
※女性の夜間電話相談は、089-927-3490 月~日 18:00~20:00です。