”おたく”和気アナのeスポーツキャスター論

オピニオン室

”おたく”を自認する南海放送アナウンサーで、記者でもある和気孝治さん(41)。今はミニ四駆にハマっていますが、もともとはプラモデル派だといい、この話を始めると長くなります。

現在、愛媛県内で唯一、eスポーツアナウンサーを名乗る(その実績もある)民放アナです。

Twitchに生配信した8日のeスポーツ大会「スティーロ杯ゼロ」でも総合司会を担当し、プロゲーマー相手に見事な大会の取り回しを行いました。

「テレビ実況はゲーム実況にも役立つ」「アナウンスのプロとしての技術が通じるのが強み」と和気さんは語ります。

アナウンサーの新たな活躍の場、eスポーツキャスターの愛媛の”最前線”です。

*******

・鉄拳・ぷよぷよ・太鼓の達人・PUBGモバイル・モンストなどなど・・・

今、人気のゲームタイトルの、ほとんどの県内eスポーツ大会の実況を和気さんはこなしています。

この”ゲームのルール”や”ゲームの楽しさ”を実際に知っているというのは大きな資産です。

和気さんは実況の仕事の前には、ユーチューブなどでチャンネル登録者数が1万人を超える有名プロ実況者の動画を見るなど、事前にゲームのルールや、アイテム、技などを勉強するといいます。

◆TVアナウンサー実況 VS ゲーマー系実況

しかし、和気さんはゲーマー系の実況にはある欠点があるといいます。

「獲れるアイテムや技などを、こと細かく伝えるため、ディープ過ぎて情報量が多く、頭がパンクしてしまう」

「例えば鉄拳だと、全ての動きを言葉にし過ぎる」といいます。

こうした傾向に対し、プロのアナウンサーである和気さんは「情報を整理して、目の前で起きたことを端的な表現で伝える訓練をアナウンサーは受けている。この点が強み」と自信を持って語ります。

◆ゲーム実況で最も大切な点は?

さらに和気さんはもう1つ大切な点を挙げます。

「盛り上げどころを外さないこと。そこでテンションを上げ、その場に合ったコメントで視聴者(観客)を引き込む術は、プロのアナウンサーにアドバンテージがある」。

和気さんは控えめで、優しい性格(弱気な性格?)で南海放送社内では知られますが、話を聞いていて、その強気な発言にちょっと、驚きました。

ゲーマー系実況者がネット上でアナウンサーの仕事を脅かしている・・・、あるいはプロのアナウンサーとしての自負心が”燃える”のかもしれません。

そして、最も大切な言葉も忘れませんでした。

「ゲームを楽しみ、熱くなることが大切」。

◆「スティーロ杯ゼロ」で県内eスポーツは新たなフェーズに

和気さんは8日の「スティーロ杯ゼロ」で、県内eスポーツ界は新たなフェーズに入ったと感じたと話します。

そう感じさせたのは、

①ネット配信(Twitch)オンリーだった点。

②新型コロナウイルス問題を無観客試合で乗り切った点。

③同じく、新型コロナウイルス問題をオンライン対戦で乗り切った点。

④オンライン対戦が、ストレスなく、スムースに行われ、精度も高く、大会として成立していた点。

⑤県内で初めて障がい者チームが参加した点。

実は、和気さんも4年半前、交通事故で左腕が動かない左上肢機能全廃と診断された障がい者です。

大会でのマルクスコラチームのファイト溢れるプレイには「子供たちの自由で明るく、全力を尽くす姿が気持ちよかった」と目を細め、八雲病院チームの実力には「圧倒的強さ。身体的なハンデが関係ないことを改めて教えられた」と感謝の気持ちでいっぱいの様子です。

和気さんは県内のeスポーツについて「今、種をまいて、芽が出て水をやっている状態。ゲームの世界はネットを軸にしてつながる世界。芽が幹になるのに貢献したい」と意気込みます。

ちょっと、”頼りない雰囲気”が持ち味の和気さんですが、県内eスポーツの発展には、頼りになる力強い存在です。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

三谷隆司をフォローする
オピニオン室