西日本豪雨から1年半以上。県内で復興が最も遅れる今治市大三島の被災地に、先週末の22日、1軒のお好み焼き屋が復活しました。
復活させたのは、鴉(カラス)昇さん(80)とケイ子さん(72)夫婦。
被災直後から「必ず、復活させる」と決意し、粘り強く取り組み、実現させました。
ケイ子さんは復活の日の22日、ほぼ12時間立ちっぱなし。焼いたお好み焼きは、約40枚でした。
最後のお客を送り出して、思わず口にした言葉は、「昼抜きで、トイレにも行かんかった」。
夫の昇さんは洗い物を手伝いながら、「くたびれたと思う」と妻を気遣いました。
80歳と72歳の夫婦は、「お蔭でここまで来れた。ひと安心したけど、これからが勝負」と口を揃えます。
2018年の西日本豪雨被害から、ほとんど復興が進んでいない被災地に”ポツン”と復活したお好み焼き屋。そのわずか5坪ほどの土地で、”孤軍奮闘”する夫婦を取材しました。
◆「頑張りよ、若いんじゃけん」「若かろか?」
復活したお好み焼き屋は、しまなみ海道の愛媛県側の玄関口、多々羅大橋のたもとにありました。
当たり一面、かんきつ畑が広がり、島民らの通行はほとんどありません。
唯一、近くに多々羅温泉という温泉施設があったため、行き帰りの島民らが常連客になっていました。
しかし、その温泉施設は壊滅的被害を受け、廃止が決定。
逆風の中、それでも80歳と72歳の夫婦は、17年間続けたお好み焼き屋を復活させることを決め、1年半以上、粘り強く努力しました。
復活の日、訪れた常連客がケイ子さんにかけた言葉が「頑張りよ、まだ若いんじゃけん」。
ケイ子さんが答えました。
「若かろか?」。
2人のファイトと粘り強さを知っている私には、冗談とは思えませんでした。
◆「やっぱり同じ味がする。昔を思い出す味」
味の特徴は、まず、このざっくりと角切りにしたキャベツ。
「誰にも習っていない。自己流」(ケイ子さん)。
ザクザクとした歯ごたえがありながら、コテで押さえつけない生地がふんわりして、微妙なジュルジュル感がソースと絡んで美味です。
うどんやそばが好みで載せられますが、特徴のもう1つがこの豚肉。
厚い・・・
さらに、食べていると、何か香ばしいような、天かすのような風味がします。
ケイ子さんに尋ねると、隠し味的に使っていると見せてくれました。
一年半ぶりに訪れた常連客からは「家で焼くと、こういう”ふんわか”感が出ない」「やっぱり同じ味がする。昔を思い出す味」と思わず笑みが漏れていました。
◆被災地の暗闇に”明かり”と”笑い声”が・・・
被災地に復活したお好み焼き屋の周りには、本当に何もありません。
そもそも、このお好み焼き屋のためだけに電力を復旧しました。
やっと被災地に1年半ぶりに明かりが灯り、島の人たちが集まり、笑い声が聞こえました。
その場を復活させ、これから切り盛りするのは80歳と72歳の夫婦です。
「二人が協力して、長続きさせたい」
「足腰が立つ間は、やってみようと思う」
昇さんは夫婦仲について、「朝起きてから、夜寝るまで、ず~とボロカスに言われとる」と笑いますが、店に立つ2人の姿は、お好み焼きの『生地』と『キャベツ』のような関係に見えました。
*******
このお好み焼き屋の復活については、3月3日(予定)のNews Ch.4特集で放送します。