eスポーツ④ゲーマーになったブルーベリー農家

オピニオン室

今治市玉川町で育てられた県内産ブルーベリー100%のジャム。

値段は2,000円(税別)。

ブルーベリーが持つ本来の甘さを活かしているため、甘ったるい、重い感じがありません。フレッシュな甘さが特徴です。

生産・販売しているのは、ブルーベリー農家の森譲寛(よしひろ)さん(30)。

0.2ヘクタールの園地で年間、約3トンのブルーベリーを生産し、生果や加工品を中心に、主にネットで販売しています。

森さん、夜はゲーマーに変身します。

6年前、父親の病気を機に、東京から玉川町にUターンし、農家を継ぎました。

森さんの実家と農園は、松山市との市境の山間部に位置し、高校はバス通学でした。

不便さは身に染みています。

しかし、この冷涼で、寒暖差の大きい自然環境が美味しいブルーベリーを育てるといいます。

所有地の一部をキャンプ場など自然公園にして、ふるさとの魅力の発信に取り組んでいます。

◆eスポーツが地元愛を”つなげる”

森さんは、3月8日に南海放送で開かれる「リーグオブレジェンド」eスポーツ大会に、鈍川温泉チーム5人の一員として出場します。

森さんに声を掛けたのは、チームのキャプテンで鈍川温泉・カドヤ別荘の支配人、田坂胤次(たねつぐ)さん(45)。

森さんと田坂さんは、以前から地元玉川町を元気づけるために何かしたいと話していて、今回の大会を機会にeスポーツチームの結成を思い付きました。

メンバーは中学2年生から、今年、還暦を迎える料理人まで職業も年齢も様々な5人。

大会後も5人はチームとして活動する予定で、「2人(森さんと田坂さん)の想いをつなげてくれたのがeスポーツ」といいます。

◆農業とeスポーツは相性がいい?

実は、農業はかなり孤独な仕事です。

ブルーベリーの収穫は夏場(7~8月)。この時期はパートを雇うなどして農園もにぎやかですが、今は1人で剪定するのが主な作業。

作業中はラジオでも聞いていないと「気分が滅入る」(森さん)といいます。

一日、家族としか話さないということも、しょっちゅうです。(これは農家を取材するとよく聞く話)

そんな中、eスポーツはチーム5人で楽しみながら練習できます。

先月は、キャプテン・田坂さんの旅館で”温泉合宿”を楽しみました。

さらにネット対戦でコミュニケーションをとることも、いい気分転換になります。

◆地方創生は”勝ち負けを競う”こと

森さんはeスポーツの魅力について「シンプルに勝ち負けを競う点」と感じています。

この”シンプルな競争”という魅力を、地方創生に活かせないか、考えています。

「地方創生は、地方が勝ち負けを競うこと。そこから逃げてはいけないと思う。若者が地元を離れるのは、玉川町の魅力が他の地域に負けているから。シンプルに認めないと・・・」と話します。

そして、「eスポーツをやってて、勝っても負けても、それを認め合った上で、喜びや悔しさの両方を、相手と共有する楽しさがあることに気付いた」といいます。

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森さんは農業生産法人「森のともだち農園」の経営者の1人として今後、年商1,500万円を目標に農業に取り組みたいと抱負を語ります。

一方で、ゲーマーとして地元eスポーツチームの活動を通じて、玉川町を全国発信したいと考えています。

南海放送で3月8日に開催されるeスポーツ大会には、こうした様々な背景を持つ選手20人、5チームが参加します。

対戦が楽しみです。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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