第46回「伊方原発【電源喪失】のインパクト」

ニュース解説

■「またか…。」

私が投稿したニュースの深層「第44回」でもお伝えしたように伊方原発では、核分裂反応を抑える制御棒を誤って引き抜いてしまうなどの重大なトラブルが相次いでいます。
この伊方原発で、また、前代未聞のトラブルが発生しました。
2020年1月25日の午後9時すぎ、愛媛県から「伊方原発でトラブルが発生したので会見を開きます」という電話連絡が入りました。
「またか…」正直な感想です。
内容を確認すると【電源喪失】という前代未聞のトラブル。
南海放送では、福島第一原発事故を教訓に伊方原発での重大事故を想定した対応訓練を定期的に行っています。
その訓練の想定に用いているのがこの【電源喪失】です。
原発の安全対策としては、「原子炉を止める」、「核燃料を冷やす」、「放射性物質を閉じ込める」の3点が重要なポイントになります。
【電源喪失】は、この安全対策に影響を及ぼす可能性があるため、今回のトラブルは深刻で重大と言えます。

■3号機の定期検査を急遽、中断
伊方原発3号機は、2019年12月26日から定期検査に入っています。

県と四国電力の会見によりますと、今回のトラブルは、2020年1月25日、午後3時44分に3号機の定期検査の一環として、1号機(廃炉作業中)、2号機(国が廃炉計画を審査中)に電気を供給する送電線の装置の交換作業中に発生。
送電線を保護するため、異常な電流が流れた場合に電線を遮断する装置が作動して停電が起きたということです。

この結果、1、2号機で3秒間。3号機で9秒間にわたり外部の送電線からの電力の供給が止まり、停電しました。
(1、2号機は予備系統の送電線から3号機は非常用ディーゼル発電機から電力を供給し復旧)
四国電力は、この重大トラブルを重く受け止め、3号機の定期検査を急遽、中断しました。

■「県民の不安と不信感はかつてない高まり」
伊方原発では、2020年に入り、立て続けに重大トラブルが発生しています。
①1月12日【核分裂反応を抑える制御棒を誤って引き抜く】

②1月20日【燃料プール内で核燃料が落下したことを示す信号発信】

③1月25日【1~3号機の電源喪失】

こうした事態に四国電力の長井啓介社長は、【電源喪失】から2日後の1月27日に愛媛県庁を訪れ、中村知事に謝罪しました。

そして、「私自身が伊方原発に赴き、発電所スタッフに意識付けをしたい」などと、原因究明と再発防止に向けた取り組みを伝えました。

※四国電力 長井啓介社長
これに対し、中村知事は、「県民の不安と不信感はかつてない高まりで、東日本大震災のあと約9年間原発問題に向き合ってきたがこのような状況は見たことない。それくらい厳しい状況にあることを全社挙げて認識してほしい。トップが現場に通って訓示をするという段階ではない。」などと、厳しく指摘しました。

その上で、次の③点を四国電力に要望しました。
①これまで松山市の原子力本部に常駐していた山田研二原子力本部長を伊方原発に常駐させて、指揮を執らせること。(1月29日着任)

※四国電力 山田研二 原子力本部長
②それぞれの重大トラブルについて徹底的に原因究明し、その対処を行うこと。
③重大トラブルが続いていることに萎縮して、今後発生するトラブルを隠ぺいしないこと。
また、中村知事は、「原因究明と対策がされなければ、次のステップ(定期検査の再開等)は、到底容認できない」との見解を示しています。

■トラブルの背景は?
2011年3月11日に福島第一原発事故が発生してから伊方原発は、定期検査のため、2012年1月までに1~3号機の全基が停止します。
その後、1、2号機は再稼働することなく廃炉が決定。
残る3号機は、2016年8月に再稼働しましたが、広島高裁による運転差し止めの仮処分決定により稼働できない状況が続くなど、福島第一原発事故後の約9年間における稼働期間は、通算2年余りにとどまっています。
日々、研修などで訓練を重ねているとはいえ震災前と比べ、実際の原発の運転に携わる時間は短くなっていることは否めません。
一方で、1、2号機の廃炉作業や3号機のテロ対策施設などの安全対策にも取り組まねばならず、業務は多岐にわたっています。
こうした技術継承の問題や労務負担の影響がトラブルの一つの要因となった可能性について、長井社長は、「真摯に受け止め予断なく色んな状況を分析したい」などとしています。

■原子力規制委員会は…

原子力規制員会の更田委員長は、1月29日の定例会見で、3つのトラブルについて「それぞれ本来やるべきことがなされずに、あるいは何か誤った操作等があって起きたことなのか、それとも偶発的な機器の故障によるものなのか、ひとつひとつ調べなければいけない。」とした上で、「(トラブル発生に)何かの背景に求めるとしたら、やはり現場の士気であるとか、協力会社との間の連携関係であるとか、そういったことだろうとは思っています。」と述べました。
また、「(3号機は)四国電力として唯一の原子炉で、現場経験であるとか、動いている炉に対する感触、感覚というものを持つことが総体的に難しくなっているのは事実」として、四国電力からの報告を待ち、一連のトラブルの原因やその背景についても規制委員会で検証していくとしました。

■不服申し立ては、当面見送り

2020年1月17日に広島高等裁判所から伊方原発3号機の運転差し止めを命じる仮処分決定が出されました。
四国電力は、この決定について「極めて遺憾で到底承服できない」などと、速やかに不服申し立ての手続きを行いたいとしていました。
しかし、続発するトラブルを受け、四国電力の長井社長は、「いまの状況で申し立てができる状況ではない」などと、不服申し立てを当面、見送る方針を示しました。

このように様々な面で大きなインパクトを与えた今回の【電源喪失】。
中村知事が、「かつてない高まり」と表現した県民の不安と不信感は払拭できるのか。
伊方原発は、いま岐路に立たされています。

※次回の記事更新は、2月6日(木)の予定です。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ(現在43歳)、 1999年南海放送入社、2008年~報道部(愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在も記者として活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースを分かりやすくお伝えます。
 

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