先週末、2人の有名”配信者(ストリーマー)”が、2018年の西日本豪雨の被災地、愛媛県今治市・大三島を訪れました。
Japanese Korean Ug (ジャパニーズ・コリアン・ユージー 26 左)さん【愛称・Ug】と、JACK POT TEEMO (ジャック・ポット・ティーモ 35 右)さん【愛称・ジャッティー】の2人です。
2人はeスポーツ大会『スティーロ杯ゼロ』(3月8日・南海放送)に出場する、チームのコーチングを目的に愛媛を訪れましたが、被災地にも足を運び、被災者から直接話を聞くなど、大会を通じて復興になにか役立てないか、考えています。
経営するお好み焼き屋を土砂に流された鴉(カラス)昇さん(80)とケイ子さん(72)夫婦。店の再開を目指しています。
被災状況を聞こうと訪れた2人から、職業が配信者(ストリーマー)であると自己紹介されましたが、チンプンカンプン。
ケイ子さんは「あなた、それで生活が出来るの?」と心配します。
さらに2人が、eスポーツ大会を通じて何かの役に立ちたいと伝えると、「ゲームで何が出来るの?正直、想像できないけど・・・」と困惑気味。
半信半疑ながらも、3月の大会会場での再開を約束していました。
◆「”ネットの街角”に立って、募金する」
ジャッティーさんはゲーム配信サイト「mildom(ミルダム)」とパートナー契約を結ぶ”公認配信者”。
ユーチューブやにニコニコ動画、ツイッチなどでのこれまでの活動経験から、「ネットの生配信を通じて募金を呼び掛けるのは難しくない。街角に立って募金を呼び掛ける代わりに、”ネットの街角”に立って募金を呼び掛けるイメージかな」と説明します。
Ugさんも「ドネートを使えば、可能」と話します。
ドネート(Donate)とは、簡単に言えば、生配信中に見事なプレイが出れば、観戦者がプレイヤーに”おひねり”的に金銭を投げ込む(寄付)行為。
配信者の収入源の1つにもなっています。
2人が、どういうかたちで復興に貢献しようと考えるかは別にして、ゲーマーが自分の得意な分野を活かして、社会や困った人たちに貢献することは十分、可能なのです。(もちろん、金銭だけでなく、スポーツが本来持つ”感動”などもあります)
◆”真剣” ”笑顔”そして、”絆”
ジャッティーさんが『スティーロ杯ゼロ』へ向け、コーチを担当するのは、マルクスコラの放課後等デイサービスに通う、発達障がいの子どもたちのチームです。(結成の経緯は前回の解説記事)
ジャッティーさんは生まれも育ちも滋賀県。現在も滋賀に住み、家業の土木建築業を手伝いながら、夜中にゲームプレイ画像を生配信しています。
この配信契約に基づく収入があります。
本人は「プロゲーマーと呼ばれるのは好きじゃない。ゲームの楽しさを伝えるのが仕事」というだけあって、子どもたちとの波長もピッタリ。
子どもたちを真剣な表情にさせるのも・・・
子どもたちを笑顔にさせるのも得意です。
別れる際、メンバーの一人がジャッティーさんのそばから離れようとせず、帰りの車の中で「俺、もうチョットあそこにいたら、泣いとったわ~」と感動していました。
◆ゲーマーはコミュニケーションが苦手、は嘘?
Ugさんは大会まで、河原学園の女子チームの指導を担当します。
Ugさんは、大会の競技タイトル「リーグオブレジェンド」の公式動画をライアット・ジャパンから依頼される実力の持ち主で、知名度も高く、女子生徒からサインをねだられていました。
母親が韓国籍のハーフで、小学5年からカナダで生活し、授業で必要なPCを買ってもらってオンラインゲームにはまったといいます。
25歳で日本に帰国し、現在は千葉県在住、プロの配信チームのメンバーとしての活動やドネーション、レッスン動画の配信などが主な収入になっているといいます。
配信者(ストリーマー)という身近にいない職業のコーチの指導”法”に、河原学園の先生も興味津々。
「さすが教えるのが上手い。ほんわかした、相手の緊張を取り除く雰囲気づくりはさすが。初対面で直ぐに感じた」(河原デザインアート専門学校・白石隆保校長)。
ジャッティーさんにもUgさんにもいえることですが、2人は”コミュニケーション下手”どころか、ゲームに関しては、凄まじくコミュニケーションが上手です。
それもそのはず、ゲーム画像配信では大体、5時間ぐらいはチャットと音声を通じて、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションをとるといいます。
まる2日間、夜の食事も含めて一緒にいましたが(2人とも酒は全く飲めない)、決して”付き合いにくい”といった感じはありません。
もちろん私が知らない部分や、個人差もあるとは思いますが、”ゲーマー=コミュニケーション下手”は、偏った思い込みだったと反省しました。
◆TV制作者 VS ネット配信者(ストリーマー)
こうした配信者(ストリーマー)によるネット配信は、ゲームはもちろん、音楽から絵画、街歩きにいたるまで分野は無限大。「チャンネルと時間の制限のないテレビのようなもの」とUgさんは表現します。
そして、「配信者(ストリーマー)の未来は明るいと思う。競争は厳しいが、企業はネット広告に力を入れている。特に若い人に人気のゲーム分野は有望」と予測します。
しかも、Ugさんは英語と韓国語、日本語(一番、苦手らしい)の3か国語を話すため、世界を相手に配信が可能です。
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eスポーツはこれまで、イベントや賞金などがクローズアップされがちでしたが、実は”表現者”という部分が最も重要であるように思います。
「収入は1人なら食べていける程度」(ジャッティーさん)ということですが、「まさか、好きなゲームで食べていける、こんな時代が来るとは思わなかった」(ジャッティーさん)ともいいます。
ゲームは若い世代にとって、表現の手段の1つになっているのです。
配信者(ストリーマー)という表現者は、表現の場がネット上であるため、存在が見えにくい傾向にありますが、『スティーロ杯ゼロ』では、テレビ番組化を通して、そうした存在(実像)にも迫ってみたいと考えています。
ネット時代の新しい”生き様”が見えてくるかもしれません。