eスポーツ『未知との遭遇』①”爆発的”可能性の深層

オピニオン室

eスポーツとは簡単に言えば、ゲームで対戦する”スポーツ”のことです。「それが”スポーツ”か?」という質問(疑問)が必ず出るのですが、そうなると「じゃ~、”スポーツ”って何なの?」ということになります。ここで「屁理屈言うな!」と怒ってはいけません。

日本の大人のスポーツの定義が、世界のみんなのスポーツの定義と等しいとは限らないのですから。

この話を始めると、”深み”にはまってしまいますので、『ゲームで競う』ことをスポーツとして捉える・・・と理解して下さい。それで不都合ありません。

◆eスポーツは『未知との遭遇』

eスポーツが、多くの常識的な大人にとって『未知との遭遇』である主な理由は、①プレイヤーが20代くらいまでと、圧倒的に若い世代に愛好、支持されている 【世代間ギャップの存在】

②見た目がどこか”反社会的”で、ニートなど社会に適応できないプレイヤーが多い(らしい)。なので、チョット怖い 【思い込みによる拒否反応】

③IT、PCなど先端分野の知識やスキルが必要。今更、理解するのは面倒くさい 【努力不足】があるように思います。

理解を阻むこうした壁は、私が2年半、eスポーツに関わって体験し、感じたことなので、恐らく多くの大人のみなさんに共通する”壁”だと思います。

◆”壁”こそ”大人の社会”が抱える課題

しかしよく考えてみると、上記3つは、私たち”大人の社会”が、未来へ向かって超えるべき課題を示してくれているようにも思います。

①若い世代の嗜好(思考でもある)を理解する

②見た目(偏った見方)で判断しない

③ITが、変化を生み出す最大の要因になっている事実を、受け入れる

つまり、eスポーツは『未知との遭遇』ですが、可能性を秘めた『未知』であるといえると思います。

◆県内でeスポーツチーム結成の動き

ここからが本題です。常識的な大人の表現(つまり、ありきたりの表現)でいえば、「eスポーツは地域社会の発展に貢献する」のでしょうか?

1つの例をお示しします。

おととい12日、今治市大三島の大山祇神社に「必勝祈願」する、5人のeスポーツチームのメンバーの姿がありました。(1人は中学生メンバーの保護者)

チームは3月8日に松山市で開催されるeスポーツ大会に出場するために去年、結成され、祈願の後は神社の近くの西日本豪雨の被災地を訪れ、eスポーツで被災地を元気づけたり、復興のバックアップが出来ないかなども話し合いました。

メンバー5人は、中学生から今年、還暦を迎えるという旅館の料理人まで、年齢も職業も様々です。

「被災地でeスポーツ大会を開催して、多くの若者に来てもらってはどうか」という案が出たり、「復旧が進んでいない現状を初めて知った。何よりまず、多くの人に知ってもらうことが大切」などの意見が出ていました。

◆メンバーに加わった動機は様々

チームのリーダー、田坂胤次さん(45)は今治市玉川町の鈍川温泉にある旅館、カドヤ別荘の支配人。

もともとゲーム好きだったといいますが、しまなみ海道開通時のような賑わいをもう一度、鈍川温泉に取り戻したいと話します。

その1つのきっかけづくりとして、チームの結成と大会出場を決心しました。

この日、旅館で、5人が大会に備えて”温泉合宿”に取り組みました。

大会で採用されるゲームは「リーグオブレジェンド」。5人一組のチームで競う”陣獲り合戦”のような内容で、100時間練習して、ようやく初心者になれるという、難易度の高いゲームです。

最年少メンバーの清水煌世さん(14)は勉強に、ピアノに、パソコン部にと忙しい地元中学の2年生。大きな大会に出場してみたくてメンバーに加わりました。

オンライン対戦(ネット対戦)は日ごろ、挑戦できますが、やはり、リアルな大会で腕前を試してみたいといいます。

森譲寛さん(30)は地元、玉川町の農家。「農業は土地に根差した職業。地元に元気がないと、農業も元気が出ない」と、eスポーツチームに参加した動機を語ります。

◆eスポーツを『楽しむ』、そして『手段』に使う

5人はそれぞれ、ゲームを『楽しむ』と同時に、”新しい世界に挑戦してみたい””地元を元気にしたい”など、eスポーツを『手段』として捉えています。

eスポーツにはスポーツに本来、備わっている①『楽しむ』という価値があります。さらに、他のスポーツと同様、eスポーツを②何かの『手段』に用いるという可能性もあり得るのです。

被災地でeスポーツ大会を開いて、若者に復旧の現状を知ってもらいたいという”思考”はその典型ですし、鈍川温泉では2月15日に大学生らを対象にした”eスポーツ合宿”を開き、50人を超える若者を呼び込む計画です。

「eスポーツは地域社会の発展に貢献する」可能性があります。

◆eスポーツが”爆発的”『手段』になる可能性

3月8日に南海放送(松山市)で開催されるeスポーツ大会『スティーロ杯ゼロ』には現在、「鈍川温泉チーム」の他にも八幡浜市の「黒い商店街チーム」も参加予定です。

全国各地の商店街は、人口減少社会という歴史的転換点に直面し、存続の帰路に立たされています。

1.若い世代に遡及する 2.多様な生き方の人々が愛好する 3.ITで世界とつながる・・・というeスポーツの特性は、これまでにない解決策を生み出す可能性があります。

さらに、大会には障害者チームも参加の予定です。仮に重度の障害で会場に移動できなくても、ネット参戦は可能です。

実は、これまで多くのゲーマーと接して思うのですが、若い世代は、”大人”が考えている以上に、『公共の問題』に高い関心を示します。

eスポーツを通じて『公共の問題』に触れてもらい、その解決への参加を促すことは、現実性の高い話だし、合理的だと考えています。

もちろん、eスポーツには依存症の問題がありますので、適切な対応は必要です。

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「スティーロ杯ゼロ」は、以上のような内容に挑戦する大会です。

地方で、地方の人々が、eスポーツを使って地方の活性化に取り組み、地方に「実り」をもたらすことは可能か?という問いかけが、スタートラインにあります。

このシリーズは、継続してお伝えしたいと考えています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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