料亭 栴檀の50年

ニュース解説

「料亭というと、接待などの華やかな世界だと思われますが、うちは案外、家族の為に大事にしていたお金を使いたいと思われるお客さんが多いような気がします」-。

松山随一の料亭「栴檀」が来年1月、創業50年を迎えます。
格式ある室礼(しつらい)に、赤い盃での乾杯から始まる正統な料理、宴席では芸妓さんを呼ぶこともでき、玄関では番頭さんが待機する、それらを満たしているのが「料亭」だといわれています。
バブル期までは市内に何軒もあった料亭ですが、いま、そのほとんどが姿を消してしまいました。


「料理旅館 栴檀」女将 稲田瑞穂さん

50年前、女将のご両親が創業した「栴檀」。店を継ぐという意識はなかったそうですが、小さいころから華道や茶道に親しむうちに、自然と導かれるようになったといいます。
「母(先代)は、もと教員だったから、レールを敷くのが上手かったのかもしれない」と笑います。

板前さんや番頭たちをてきばきと仕切っていたカリスマ的な存在の先代女将のもと、もてなしについて徹底的に教えられた稲田さんですが、親しみやすい笑顔と気さくな人柄に、多くの贔屓客がいます。
「私が女将をやれているのは、従業員やまわりのみなさんに助けられて…なんですよ」と何度も口にします。

先代女将が確立した栴檀ののれん。
半世紀を迎えて、2代目女将が新しい彩りを加えます。

栴檀の隣の建物に、一昨年、そば屋「二葉(ふたば)」をオープンしました。
「栴檀は双葉より芳し」から引用しています。

それまで宿泊客のラウンジにも使用していた瀟洒な洋室を活用しました。


メニューは、限定20食のそば。
折々に、もっとも旬を迎えているそば粉を全国から仕入れて、料亭の板前さんがそばを打ちます。

女将のこだわりは、料亭と同じ出汁をつかった厚焼き卵。
そばを注文してから、ゆがきあがるまでの待ち遠しい時間に、ぜひ味わってほしい、との思いから、前菜として出されます。

栴檀の最高級の出汁を、厚焼き卵で初体験すると、「いつかきっと栴檀に行くぞ、お仕事がんばるぞ!」と思ってしまいます。


季節の天ぷらそば(1250円税込)

打ちたてのそばに、素材の味を生かし切った「ぬくいそば」もおいしいのですが、「にしんせいろ」はぜひ味わっていただきたい一品です。


にしんせいろ(1350円税込)

「にしんそば」というと、私はレトルトの硬い「にしん」しか知らなかったのですが、ほっこりとほどけるにしんは、初めて口にしました。
干物のにしんを、米のとぎ汁で時間をかけて戻し、小骨をひとつひとつ丁寧に抜き取り、蒸しあげるという手間をかけているそうで、甘辛く煮付けた身は、ほかほかご飯にも合いそうです。

女将のチャレンジはさらに続きます。

「白檀(びゃくだん)」と名付けられたオリジナルの洋菓子をこのほど誕生させました。
流線型の箱には、梅の花を模した伊予三島の水引がかかります。内包装には漉き和紙を使用。
料亭の手みやげとして期待が高まる演出です。

地元「梅錦」の酒粕を、県産小麦粉の生地に練りこみ、北海道産の小豆餡をはさみます。
ふんわりと吟醸酒が香ります。



白檀(1箱 10個入り2,500円 税別)

「白檀」は、このほど松山市のブランド新製品コンテスト「ネクストワン」の優秀賞を受賞。松山を代表する料亭のお菓子として、ますます注目されそうです。

「じっとしときなさい、という人もいるんですけど(笑)、着いた電車には乗ってみてもいいかな、と思うんです」ー。

2代目女将の栴檀は、つぎの半世紀、どのような香りを運んでくれるのか楽しみになってきます。

創業50年を迎えた「栴檀」女将の稲田瑞穂さんのインタビューは、きょうの「ニュースな時間(16:00~)」18:20頃から放送します。

※そば屋 二葉 火~土(11:30~13:30営業 なくなり次第終了) 松山市石手1丁目(料理旅館 栴檀内 089-977-2055)

今年1年ありがとうございました。次回は1月8日(水)掲載予定です。

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この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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