11月26日の解説記事『被災地復興「レモン香る園地に」今治大三島』で、西日本豪雨で大きな被害を受けた今治市大三島の上浦町で農地を再編し、大都市圏で人気があり、価格が安定している”レモン”を中心に栽培する計画があるとお伝えしました。
レモンを復興後の新たな栽培かんきつに選ぶ理由は、価格の高値安定に加え、①収穫期間が11月から翌4月ごろと長い、②用途が広く、特に大都市圏では紅マドンナと並んで人気かんきつになっている、の大きく2点です。
すでに大三島ではイヨカンや八朔などの昭和50年代ごろ、価格が高かったかんきつから、レモンに植え替える農家も出ています。
◆しまなみ海道 ”レモン”で若者引きつける?
今治市大三島のしまなみ海道での位置です。
被災地の大三島上浦町は愛媛県と広島県の県境に位置する多々羅大橋のたもとにあり、いわば、しまなみ海道の愛媛県側の玄関口。
地元はもちろん、愛媛県の観光全体にとっても大切な場所です。
この玄関口に、サイクリストらを中心とした観光客に人気のスポットがあります。
『リモーネ』というレモンを中心としたかんきつ加工品を販売したり、レモネードなどの飲み物を提供する店舗です。
取材したのは12月8日で、日曜日ではあったものの観光のオフシーズン。しかし取材中、観光客がひっきりなしに訪れます。
店内にはレモンを使ったリキュールやジュース、調味料や菓子など多品目が並びます。
10年前に店舗をオープンさせた山﨑知子さんによると、レモンの魅力の1つは「用途が万能」である点。ジュースや酒、菓子はもちろん、アロマなどにも使えるといいます。
さらに、レモンの大きな特徴の1つは、若い世代を引きつける点です。取材中も訪れる観光客は、ほとんどが20代でした。
◆「しまなみ」のイメージアップにも役立つ?
関東からサイクリングを楽しもうとやって来た大学生3人は、2泊3日の日程で尾道から今治までのサイクリングを楽しむ途中だといいます。
埼玉県の菊地航希さん(22)はなんと、しまなみ海道2回目。レモンリキュールを使ったカクテルを飲んでその美味しさを知り、リモーネに寄ったといいます。
もう1人の大学生、大泉瑠恩さん(23)はミカンを頬張りながら、「旅行が好きでこれまでに35か国に行ったけど、しまなみの景色は海外にない独特な特徴があると思う。外国人がサイクリングに訪れるのも理解できる」と話します。
そして、2人とも「レモンはイメージがいい。愛媛へ来て観光振興が上手いなぁーと思った」と声を揃えます。
◆SNS向きのレモン、若い女性にも人気
友人と2人で初めての四国を楽しむ、群馬県に住む澤田茉里香さん(24)もかんきつが大好き。中でもレモンが特に好きだといいます。
理由はやはりその用途の広さ。今回、リモーネで買ったのはレモンケーキとレモンピール、そして、レモンのアロマスプレーです。
こうした若い世代を中心としたレモン人気は、レモン価格にも表れています。
過去には振れ幅が大きかったレモン価格ですが、ここ数年は高値で安定しています。
◆栽培農家は高齢化、園地存続の危機
こうした若い世代を引き付けるレモンですが、逆に、供給側の地元農家は問題を抱えています。高齢化と担い手不足です。
もちろん、西日本豪雨による被害も大きな障害となっています。
農地再編で復興に取り組んでも、この問題の直接の解決にはなりません。
この農地再編後、”誰がレモン栽培の担い手になるのか?”という問題については来週、お伝えします。