ストーリーを食べる

オピニオン室

「作り手さんが作り続けるためには、買ってくれる人がいないと続いていかない。いいものを作り続けてもらうために、われわれにできることは、なんだろうと考えました」―。

付録が「食べ物」というユニークな雑誌「えひめ食べる通信」がこのほど創刊されました。定期的に愛媛のこだわりの食材が送られてくるんですよね、と編集長の末松史子さんに問いかけると、
「いいえ。あくまで食べ物付きの定期購読の情報誌です。雑誌がメインです」とにこやかに返します。

もともとは、東日本の震災後に、東北の一次産業の人を応援しようということで始まった全国的な組織で、つくり手と食べる人を「つなぐ」ことが柱になっています。

創刊号は、岩城島でレモンポークを育てている松浦史拓さんの特集です。
40年前「青いレモンの島」と名付け、レモン栽培での地域おこしに力を尽くした島民の努力が実り、いまやしまなみ界隈は国産レモン産地として全国的に注目される地域になりました。
その岩城島で、ていねいにレモンポークを育てる松浦さんを、どうしても第1号に紹介したかった、と末松さんは語ります。

レモン加工品で発生した搾りかすを餌にし、丹精込めて育てたレモンポークの物語が紹介されています。

片面B4の大きさは、ページをめくるたびに、島の風に包まれているような臨場感があります。

えひめ食べる通信」の料金は、1号あたり2,500円(税込)プラス送料。
末松さんは「食の通販とは違うので、この値段で(食材は)これだけ?という人もいますが、これだけの手間とこだわりで作ったからこの価格、ということを理解してもらえたら」といいます。
2か月に1回の定期発行ですが、自然のものなので、産品が予定通りに熟していないときは「ちょっと待って」ということもあるかもしれませんが、待つ楽しみも味わっていただきたいな…と笑います。


末松さんら編集部のスタッフが、車に段ボールを積み込み、手作りのメッセージや発送シールをもって、岩城島に出向き、全国への発送作業をするそうです。

「作り手さんに、いいものを作り続けてもらうために、われわれにできることは、買い続けていくこと、そして発信していくことで、応援していく人が増えていく、おいしいという人がいて、作り手の励みになり、またいいものを作り続けてくれる、その懸け橋になれたら」―。

この豚肉がなぜ「レモンポーク」なのか。そのストーリーを知ると、きっと咀嚼のスピードもゆっくりになって、体中がおいしいと反応するかもしれません。

セキ(株)発行の「えひめ食べる通信」。編集長・末松史子さんへのインタビューは、きょう(12月4日)のニュースな時間(16:00~)内、18:25頃から。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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