西日本豪雨に耐えた「島の紅マドンナ」の今後

ニュース解説

去年の西日本豪雨によるかんきつ被害は、南予以外にも大きな爪痕を残しました。その1つが松山市沖の興居島です。

約1200人が暮らすこの島で、父親から受け継いだ約2.4ヘクタールの園地でイヨカンやせとか、紅マドンナなどを育てる山内明さん(51)。

去年の西日本豪雨で、4棟ある紅マドンナのハウスが土砂被害を受け、うち2棟は壊滅的なダメージを受けました。

その後、土砂を取り除き、不完全ながらもなんとか作業が出来る状態にまで回復させました。

西日本豪雨から1年5か月。ハウス内の紅マドンナは実を付け、現在、収穫を待っています。

今年の紅マドンナの解禁日に当たる初セリは、今月21日に予定されています。

ハウス内の紅マドンナは6年ほど前に苗木の状態から、まず路地で育て、実を付けるようになった3年前に、弱い果皮を雨から守るため、ハウスを整備しました。

紅マドンナは ①ゼリーのような食感が特徴的な高い品質という”実力”と、②出荷時期が年末で、お歳暮時期に重なるといった”市場環境”も背景に、「キロ当たり1000円が期待できる『無敵』の中晩柑」(JA関係者)という地位を築きました。

しかし、山内さんのハウスの被害は大きく、今後、長期的に農作業の効率化なども考えて、国の制度を活用した農地再編を計画しています。

再来年の着工を目指していますが、それまでは「待ちの状態」(山内さん)ということで、すぐには本格復旧に踏み切れない、もどかしい状態が続いています。

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山内さんにとって、さらに大きな痛手は、全栽培面積の約25%を占め、価格も高いことから主力商品となっていた「せとか」の園地の4分の1が土砂で流されたことでした。

山内さんの園地では元々、全て「いよかん」を栽培していましたが、価格の暴落後、「デコポン」や「せとか」と、時代に適した味や価格のかんきつを栽培してきました。

「せとかを初めて口にした時、その濃厚な味に衝撃を受けた」(山内さん)

「せとか」は2月の収穫へ向け、今、日焼け止めや防鳥を目的にサンテと呼ばれる、実に袋を掛ける作業が行われています。

しかし、西日本豪雨による園地流出で、2割程度の収入減は避けられないのではないか、と山内さんは話します。

せとかの園地では、作業道が応急的に整えられていますが、モノラックなどは依然、壊れたままで、復旧が進んでいない現状が見て取れます。

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やれることを、やれる範囲で復旧し、残った園地で懸命に栽培している、というのが取材しての印象です。

1つの区切りは来年早々にも計画がまとまる、農地の再編が実現し、作業効率が良く、高収入のかんきつ園地が実現することです。

しかし10年、20年を見越した長期的な取り組みだけに、それまで、いかに農家に希望を持って、やる気を持続してもらうか。

国や地方自治体、報道も含め、支援する側にとって重要な課題だと感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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