第35回「愛媛の新ブランド米 “ひめの凜” デビュー」

オピニオン室

■16年の歳月をかけて開発

約1年前にネーミングが発表された愛媛県のオリジナルブランド米「ひめの凜」が11月6日にデビューしました。
「ひめの凜」は、愛媛県が16年の歳月をかけて開発したオリジナルの品種で、いよいよ一般消費者向けに県内のスーパーや百貨店など200店舗余りで販売がスタートしました。

■“美味しさ”と“作りやすさ”を追求

「ひめの凜」は、食味に優れ、収穫量が多い「媛育56号」を母親に、また、暑さに強い「西海245号」を父親に持ちます。このため、“美味しさ”と“作りやすさ”を両立しています。
食味の特長としては、一粒一粒が大きく、歯ごたえがあり、甘みも強く、冷めた状態でも旨みが感じられるため、炊きたてはもちろん弁当やカレー、丼などにも適しています。
一方、栽培面から見ると、既存のコメと比較して、稲の背が低いため倒れにくく、夏場の高温に強いため、温暖化が進む中で育てやすい品種と言えます。

■プレミアム感で勝負

県などでは、販売にあたりプレミアム感にこだわっています。
「ひめの凜」は、タンパク質や水分の含有量、食味などを基準に「プレミアムクオリティ」、「ハイクオリティ」、「スタンダードクオリティ」に3分類されます。
今年度、収穫される「ひめの凜」は、約300トンで、このうち、最上位クラスの「プレミアムクオリティ」は、わずか約25トン。続くクラスの「ハイクオリティ」は、約200トンとなっています。
販売価格は、「プレミアムクオリティ」が2,380円(5キロ・税別)。「ハイクオリティ」が2,080円(5キロ・税別)と880円(2キロ・税別)となっていて、県内産コシヒカリと比較して1割程度高く設定されています。
このような「ひめの凜」の品質を維持するため、県は、認定栽培者制度を採用していて、今年度は110人の農家が64ヘクタールで作付を行っています。そして、今後の目標として、作付面積を2年後に350ヘクタールまで拡大したいとしています。
「ひめの凜」が人気ブランドとして市場に定着することができるのか、今後の販売戦略やブランド戦略がカギを握っています。

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■愛媛県では腎臓病患者向けのコメも開発中!!

「ひめの凜」に続き、愛媛県が開発に取り組んでいるのが腎臓病患者向けの“低タンパク米”です。
腎臓病患者は、1日に摂取できるタンパク質の量が制限されています。
その目安は、体重50キログラムの患者の場合、30~35グラム程度です。
このうち、ご飯3食分(ご飯1食180グラムあたりタンパク質4.5グラム)で、1日分のおよそ40%にあたる13.5グラムのタンパク質を摂取することになります。
このため、腎臓病患者が主食からのタンパク質の摂取量を抑えるためには、ご飯そのものの量を減らすか、人工的にタンパク質を減らしたレトルトご飯を購入するなど選択肢が限られているのが現状です。

このうち、レトルトご飯を購入する場合は、一食当たりの単価が通常のコメを炊いたご飯と比べ10倍程度、高価になってしまうというデメリットがあります。
県が開発する“低タンパク米”が市場に流通すれば、家庭で“低タンパク米”を炊飯できるため、レトルト米を購入する場合と比べ経済的な負担が減ります。
さらに、ご飯から摂取するタンパク質の量も減るため、その分をおかずやデザートに振り替えて、食生活を充実させることも可能となるのです。

■4年後の実用化を目指す
コメには、人が食べて「消化吸収しやすい」タンパク質と、「消化吸収できない」タンパク質があります。
県の開発する“低タンパク米”は、「消化吸収できない」タンパク質の比率を増やすことで、体に吸収されるタンパク質の量を減らせる仕組みとなっています。
県は、今後、愛媛大学医学部と連携し、臨床試験などで医学的な裏付けを行うことにしていて、早ければ4年後の実用化を目指しています。
県によると、県内の透析が必要な腎臓病患者数は、全国ワースト16位で、その数も年々増加傾向にあります。
また、世界的見てもコメを主食とするアジア各国が人工透析患者数で上位を占めていて深刻な問題となっています。

愛媛県農林水産研究所の水口聡主任研究員は、「〝良薬は口に苦し″ではいけない。食べて美味しいものでなくてはいけない」と、開発に懸ける思いを語ってくれました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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