「ロシアの人は、日本人がとても好きで、リスペクトしてるんですよ!」-。
≪SmileMix古茂田プレゼンターと池田慈さん≫
県美術館で開催中の「ロマンティック・ロシア展」のラジオアンバサダーを務めているピアニスト池田滋(めぐみ)さん。
愛媛大学教育学部で音楽を学んでいたとき、たまたま訪れたロシア人ピアニストのコンサートで衝撃を受け、そのまま渡露、ロシアの音楽学校に留学したというアグレッシブな女性です。
時は、ソ連崩壊から10年後。情報もインフラも物資も十分とはいえないなか、よくわからない国に、熱情だけでぽーんと飛び込んだ女学生。ホームステイ先では、台所の片隅に居場所をもらい、寒さと慣れない食べ物に格闘しながらの生活でした。暮らしは大変でしたが、当時のロシアは、舞台やコンサートなどは、学生は無料。教育には投資を惜しまない姿勢があったようで、池田女学生は、留学中の8年、世界最高といえる芸術をたっぷり吸収することができたそうです。
◆ターニングポイントは「黒パン」
穀物のミルク煮にソバの実、黒パン。留学当時、ホームステイ先で出される料理がどうしても口に合わず、こっそり店で総菜などを買っていましたが、自分で料理をするようになると、黒パンのおいしさに目覚めたそうです。
黒パンというと、甘―い黒糖パンを思い浮かべる日本人の多くが、まず顔をしかめてしまうのがロシアの黒パンの酸っぱさ。
池田さんは、ガマンしてでも3回は食べてみてほしい、といいます。
「1回目2回目は不味い、3回目になると何か引っかかるものがあり、4回目はなぜか食べたくなってしまうんですよ」―。
黒パンになじむと、ロシアの料理はけっこう日本人の口に合うことがわかるのだとか。
スライスした黒パンにハムをのせ、ラップで巻いたものを、いつもカバンに入れていたそうで、いまではあの酸っぱい黒パンが恋しくて仕方がないそうです。
◆おそロシア?
ロシアは怖い、よくわからない、いつも怒ってそう…と、あまり明るいイメージは持っていないですよね、私がとつぶやくと、
「ロシアの人は、日本人がとても好きで、リスペクトしてるんですよ!」
と、大きな瞳をさらに大きくして力説する池田さん。
池田さんが出会ったロシアの人は、日本のおもてなしの心や禅の心にとても興味を持ち、日本食を愛し、日本が大好きといった人ばかりだったそうです。タクシーに乗った時、日本人だとわかると“日本人が大好きなんだ”“タクシー代は要らないよ”と、運転手に言われたこともあったとか。
「モスクワの人は、みんな親しみやすくて世話好きで…いまの東京にはないような、人情味があるんですよ」―。
◆実は似ている?日本人とロシア人
日本の民謡や歌謡曲と、ロシア民謡はよく似ているので、ロシア民謡のメドレーを、ピアノと琴で編曲したこともあるという池田さん。日本人とロシア人はメンタリティでも、似ているところがあるように感じるといいます。
たとえばおとぎ話。西洋のおとぎ話は、善者と悪者がいて、悪者をやっつけてハッピーエンド、というのが定番。日本の場合は、浦島太郎のように、ハッピーエンドかどうかわからないようなものが多くある。ロシア民話も、白黒はっきりつかないものが多く、そういった曖昧さを好み味わうところがあるのではないか、と指摘します。
日本とロシアはお互い郷愁を感じる何かがあるのではないか…と。
≪留学時代の池田さん≫
池田さんが、ロシア人ピアニストの音色に出会い、ぽーんとロシアに旅立ったように、この展覧会を見て、ロシアで学びたいと思う若者が出てくるかもしれませんね。
国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンチック・ロシア展国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンチック・ロシア展国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンチック・ロシア展は11月4日まで県美術館で開催されています。
池田慈さんのインタビューは、きょう18日(水)あす19日(木)の「ニュースな時間」18:30頃~放送です。
ピアニスト池田慈さんのHPはこちら。