第28回「女子大学生誤認逮捕問題 県警は何を語ったか?」

オピニオン室

■愛媛県議会9月定例会 開会

9月13日に開会した愛媛県議会9月定例会。
18日からは、交渉会派による代表質問を皮切りに質問戦がスタートしていますが、この9月定例県議会がいま大きな注目を集めています。
その理由が、2019年7月に発生した愛媛県警による女子大学生誤認逮捕問題です。

 ■誤認逮捕を振り返る

2019年7月8日、愛媛県松山市内の女子大学生が松山東警察署に逮捕されました。容疑は、同年1月9日午前2時すぎ松山市内の路上で、タクシーの助手席から現金約5万5000円が入ったセカンドバッグを盗んだという窃盗の疑いです。事件当時、タクシーの車内に設置されていたドライブレコーダーには、助手席に女、後部座席に女の知人3人の計4人の姿が録画されていました。警察は、このドライブレコーダーに映っていた犯人の女に良く似ているなどの理由で、同じアパートに住む女子大学生を逮捕しました。しかし、裁判所が勾留請求を認めなかったため、女子大生は逮捕2日後の7月10日に釈放。その後、7月16日、逮捕された女子大学生と同じアパートに住む女が犯行を認めたため、誤認逮捕が発覚しました。女子大学生は、無実ながら約52時間にわたり身柄を拘束され続けたことになります。

■調査結果等は、県議会で報告・公表
誤認逮捕発覚後、女子大学生がつづった手記には、「ずっと容疑を否認していたにもかかわらず捜査に関わった刑事全員が女子大学生の話に耳を傾けることは無かった」、「自白を強要するかのような言葉を執拗に言われた」などと、生々しい取り調べの様子が記されています。
一方、警察は、この手記の発表を受け「違法な取り調べという認識はない」としています。
これに対し、愛媛県内の報道機関などで組織する県警記者クラブは、県警本部長に誤認逮捕に関する記者会見を申し入れていますが、これまで開催されておらず、県警本部は、県民の代表である県議会において調査結果等を報告・公表するとしています。

■県警トップは何を語ったか?

このように愛媛県警が誤認逮捕に関する調査結果を報告・公表する場としたことで、大きな注目を集めることとなった県議会の9月定例会で、質問戦が始まりました。

※自民党・福羅浩一県議
県民の代表である県議会議員からの関心も非常に高く、この議会では、複数の会派、議員が誤認逮捕に関する質問を行っています。9月18日には、自民党会派を代表して福羅浩一県議が、翌19日にはえひめリベラルの会を代表して西原司県議が誤認逮捕に至った経緯や自白強要の有無、再発防止策など誤認逮捕に関する質問を相次いで行いました。

※えひめリベラルの会・西原司県議
これに対し、9月9日に着任したばかりの篠原英樹県警本部長が答弁に立ちました。篠原本部長は、まず、「当事者の女性には誠に申し訳ないと思っております」と謝罪しました。


※篠原英樹 県警本部長
そして、調査結果については、「被疑者特定の経緯、裏付け捜査の状況、捜査指揮の在り方等誤認逮捕に至った要因や取り調べの状況について調査中であり、結果を取りまとめた上で丁寧に説明したい」。再発防止策については、「誤認逮捕の発生原因について調査中であり、調査結果を取りまとめた上でその詳細を説明したい」と述べましたが、具体的な内容は、明らかにされませんでした。
一方で、タクシーのドライブレコーダーの映像を見誤ったことや幹部によるチェック機能がおろそかになったことを捜査上の問題点に挙げ、再発防止に向けて、7月24日から8月5日にかけて県警本部の刑事部幹部が全警察署を巡回し、署長と副署長はじめ捜査幹部等に対して指導を。また、捜査の中核を担う警部補に適正捜査に関する研修を行っていることなどを報告しました。
しかし、女子大学生の手記にあった”自白の強要”の有無については、触れられませんでした。

 ■調査結果の公表はいつになるのか?
8月6日に開催された県議会のスポーツ文教警察委員会で、松下前県警本部長が謝罪し、県議会で調査結果を報告するとしてから1か月あまり。これまでの県議会での県警本部の答弁を受け、県議からは、「捜査中ということを考慮して、これが精いっぱい」と、一定の評価をする一方で、「県議会への報告が遅れている理由が分からない」、「県議会で報告すると言うのであれば、一部の議員しか出席できない委員会ではなく、全員が出席する本会議の場で行うのが当然なのだが」、「9月定例会中に納得できる答弁がなければ、我々も何か考えなければならない」などと、不満の声も聞かれました。

※報道陣の取材に対応する篠原県警本部長
篠原県警本部長は、9月18日の本会議終了後、報道陣に対し、「(10月3日開催の)委員会も含め今後取りまとめた段階で早急に県議会に報告したい」と話しています。

県警本部の調査結果は、誤認逮捕された女子大学生が納得できる内容となるのか。
また
、それは、いつ、どのような形で県民に示されるのか。注目されます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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