「働き方改革」で、みんなが働きたいように働けるしくみを作りましょう!とはいうものの、考えなければいけないことがありすぎてまたストレスになる…。働き方改革を、法律・医療・心理など多面的にとらえる勉強会に参加してきました。
多様な働き方と心のケア~法と医と心の果たす役割~(日本交流分析協会四国支部・日本産業カウンセラー協会四国支部共催)
◆働き方改革はストレスがいっぱい
労働時間の短縮や、有休取得の義務化。これまでの長時間労働があたりまえといった働き方から、人間らしい働き方に変えることはとても歓迎すべきことです。ただ、人にとって「変化」はストレスになるといいます。「多様な働き方」は、自分だけではなく、周囲や他人の変化を受け入れることにもなり、それがストレスにもなる。それを大前提として、対応が必要になってくるし、そのストレスを自分の成長にどのようにつなげていくかが課題になってくるといいます。
◆部下を見ていますか?
成長につながるストレスもありますが、職場のストレスがメンタル不全につながる前に、どのように対応すればいいのか。企業の人事コンサルタントを担うことが多い交流分析士教授の川合由美子さんは、管理職に「部下のことをよく見ていますか」という問いかけをするそうです。するとほとんどが「全体を見ています」という返答が。つまり、自分では広く見ているつもりでも、一人一人をちゃんと見ていない。これでは、必要な人に必要なサポートもできません。
産業医の昇淳一郎さんは、毎日数秒でも、あいさつだけでもいいから、顔を見て声をかけることで、その人の体調や心の変化をキャッチすることができるといいます。
◆あなたの評価は正しい?
自分は一人一人を見ている、と自信のある管理職でも、自分の見方に「クセ」があることをわかっていなければいけないと川合さんは指摘します。たとえば「完璧に仕上げたいタイプ」か「早く処理したいタイプ」か。管理職は、自分と似たタイプは好感を持ちやすいが、違うタイプはネガティブな感情を持ってしまい、評価が低くなりがちであるということを意識しないと、部下とのコミュニケーションもうまくいかないと説きます。
◆「メール」「電話」どちらが失礼?
部下とのコミュニケーションがうまくいかない…。多くの職場で聞かれる言葉です。
シニア産業カウンセラーの田中節子さんは、職場の電話が怖くてメンタル不調になり、会社を辞めてしまう、という新入社員は決して少なくないといいます。“電話くらい取れない新人なんて要らない”?
仕事で誰かに連絡を取らなければいけないとき「まず電話でご挨拶をして、それから具体的な内容をメールで」なのか、それとも「メールで都合を伺ってから、電話をさせてもらう」どちらでしょうか。大まかに50代以上は前者、それ以下は後者といわれます。
管理職世代は、いきなりメールは失礼だろ!と思うし、若手は自分の都合で相手の時間をいきなり奪ってしまう電話は失礼だ、と思っています。
その違いが誤解を生み、若い人を「礼儀を知らない」と非難しメンタル不全に追いやってしまうことも少なくないそうです。
◆丁寧なコミュニケーションを
そんな世代間の認識の違いについて、若手は上司に「失礼にあたるのではないか」と忖度してものを言えない、上司は「ハラスメントになるんじゃないか」とナーバスになって言いだせない、というお互いのコミュニケーション不足となり、トラブルの原因になっていることが多いと、田中さんは指摘します。
人手不足で人が集まらない中、「電話」問題くらいで優秀な人材を逃すのはもったいない。まずは40代以上が20代に歩み寄ることが大切。そして1~2日の新人研修ですませるのではなく、その企業の文化に合わせた丁寧なソーシャルスキルトレーニングが必要だと説きます。
勉強会の中で「変化についてこれないのが50代以上。なぜなら成功体験が邪魔をするから」という言葉がありました。“私のやり方が正しい”をいったん横に置いて、“ちょっと変化を楽しんでみようか”が大切だと。年輩者が変化を楽しんでいる姿は、若い人たちにも、年齢を重ねて働くことへの希望につながるかもしれないなと感じました。