報道は贅沢品か?~ラジオ番組審査会を終えて

ニュース解説

日本民間放送連盟賞中四国地区ラジオ番組審査会が今月10日から3日間、広島市で開かれ、南海放送制作の「緊急放流=逃げろ!~誰が命を奪ったのか」(5月31日放送)が、報道番組部門で最優秀に選ばれました。

ITが進歩し、溢れんばかりの情報に誰もがアクセスできる豊かな社会になる一方、実は、報道が贅沢(ぜいたく)品になりつつあるのではないか? という”不安”を感じていましたが、番組審査会でその不安の背景の一端を見た思いがします。”報道とコスト”の問題について考えたいと思います。

◆16社参加して「報道作品」は4作品

審査会は年に1回、中四国でラジオ放送を行う16社が参加して開催されます。「報道」「教養」「エンタ」「生ワイド」の4部門にそれぞれ出品し、3人の審査員が審査し、各部門で最優秀に選ばれた1作品が中央審査に進みます。

ところが、報道部門への出品が極端に少ないのです。わずかに4作品。今回、出品した社は山陽放送、山口放送、中国放送、南海放送でした。私は3年続けて審査会に出席しましたが、この傾向は続いており、FM局の出品は3年連続ありません。

ちなみに、教養部門には11作品、エンタ部門には14作品、生ワイド部門には11作品が出品され、教養部門とエンタ部門は共に広島FM放送が最優秀を受賞しています。

この事実は何を意味しているのでしょうか?

◆”報道にはお金がかかる”は事実の1つ

南海放送報道部には部長以下、支局記者も含めると21人の社員スタッフがいます。ラジオ番組の場合、報道部とラジオ担当セクションが協力して番組制作に当たりますから、さらに増えます。

今回、番組が西日本豪雨災害に関する内容でしたが、災害報道には最新機材も必要で、災害が多発する中、設備投資も増えています。

さらに、報道記者の育成は、金銭には置き換えられない重要な”コスト”です。

一概にいえませんが、30分を超える番組が制作できる能力を備えた報道記者を育てるには、10年はかかると思います。

報道作品の出品が少ない理由の1つに、この”報道にはお金がかかる”という問題があるように思います。

ラジオやテレビ、新聞など既存メディアは、IT社会の進展で厳しい競争にさらされており、減収圧力を市場から受けています。

”報道とコスト”の問題は、どのメディアも避けて通れない重要なテーマです。

◆”お金をかけない”報道番組も存在する?

そんな中、今年の審査会で、報道にとって重要な”視点”と”使命”をしっかり踏まえたうえで、演出や創り方を工夫し、『ほら、こんな報道番組もあるんだよ』と新風を吹き込むような作品に出合いました。

中国放送の「戦後73年 いま語り出す原爆の詩」という作品です。

この作品の”視点”の斬新さは、原爆被害のむごたらしさを峠三吉の詩、『序』の朗読で表現した点です。(「にんげんをかえせ」というフレーズで有名。平和公園に詩碑がある)

私はこの作品を聴いたとき、「これを報道作品と呼べるのだろうか?」と感じました。というのは、取材と呼べる作業がほとんどないのです。そして、「もしこの作品を報道作品と認めるなら、南海放送より出来がいい」とも感じました。

3人の審査員の採点結果から、報道作品と認められたのは明らかです。

広島の放送局として、歴史的に原爆被害や核問題に向き合い、峠三吉の詩に深い愛情と理解があるからこそ可能となった”低コスト”番組です。(少なくとも南海放送の作品と比べて)

しかし、この優れた作品の制作者を育てるには、金銭には置き換えられない”コスト”がかかったことでしょう。

放送局の歴史という時間の資産が、作品の費用を賄ったと言えるかもしれません。

”報道番組とコスト”、南海放送も中国放送を見習って、切磋琢磨しながら、よりよい報道番組づくりへのチャレンジを続けたいと思います。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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