ニュースチャンネルX 水産王国愛媛を守れ!

オピニオン室

ニュースチャンネル4では、
南海放送開局70年の今年、
毎月1回、1つのテーマを掘り下げ、
過去から続く現在、そして
未来を見据えた報道に挑戦しています。

タイトルは、
「ニュースチャンネルX」

先月30日に放送した第5回では、
愛媛が全国に誇る水産業をテーマに、
4年前に始まったアコヤ貝大量死など、
様々な課題が山積する
「愛媛の海」を取材しました。

※詳しくは動画で!

海の宝石、真珠

愛媛は全国有数の真珠の産地です。

1907年、現在の愛南町で
産声をあげた愛媛の真珠養殖。

戦後から本格的に普及し、
三重県などの県外業者や
不漁が続いていた
地元のイワシ漁師たちが参入しました。

その後、愛媛の真珠は販売額を伸ばし、
1991年にはピークの
およそ315億円を記録。

しかし、1996年の
赤変病によるアコヤ貝の
大量死をきっかけに
生産量、販売額ともに下落します。

###

2019年のアコヤ貝大量死

そうしたなか、4年前の夏に発生したのが、
ふ化して間もない稚貝を中心とした
アコヤ貝の大量死です。

最初の年にあたる2019年の
愛南町と宇和島市の被害額は、
およそ3億円にのぼりました。

その後も毎年、水温が高くなる
夏から秋にかけて、
宇和海では稚貝が死ぬ被害が
続いています。

原因を調べていた国と県は、
去年、新種のビルナウイルスによる
感染症と特定しましたが、
根本的な対策は
今も確立されていません。

###

「真珠」には2種類の業者が携わる

真珠を作り出すまでには、
2種類の養殖業者が
関わっています。

1つ目は
アコヤ貝養殖業者。

人工ふ化させたアコヤ貝を
およそ1年半かけて大きく育てます。

いわゆる
母貝を養殖する業者です。

 

もう1つは、真珠養殖業者。

アコヤ貝養殖業者から仕入れた母貝に、
真珠の元となる核を入れ、
真珠を生産します。

アコヤ貝不足で真珠生産量落ち込む

大量死に比例するように、
アコヤ貝が生み出す真珠の生産量も
減少しています。

2021年の生産量は4300キロ。

5100キロを生産した長崎に追い抜かれ、
愛媛は12年連続で維持してきた
全国トップの座を明け渡しました。

対策は強い貝作り しかし…

県水産研究センターでは、
ウイルスに強いアコヤ貝を掛け合わせる
選抜育種を続けています。

また、今年度は研究範囲を
DNAにまで広げる
新たな研究の準備が進められています。

しかし、真珠・アコヤ貝を担当する
西川智主任研究員は
「強いアコヤ貝の完成には
あと5年は必要」と話していて、
養殖業者らの苦悩は
今後も続くと予想されています。

###

養殖魚輸出では中国問題が浮上

先行きの見通せない愛媛の水産業ですが、
このほか、福島第一原発の
処理水放出を巡り、
中国が日本の水産物を
全面禁輸にした問題では、
愛媛の水産物も
対中輸出がストップしています。

この問題では、処理水放出の後、
東北の水産物も扱う
松山市の水産市場で、
市場価格や売れ行きなどに
影響が出ていないかなど、
関連取材を行いました。

様々な困難に直面する愛媛の水産業

真珠、アコヤ貝、そして
全面ストップした中国向け輸出。

海の環境が目まぐるしく変化を続ける今、
愛媛の水産業は、海図なき海を
進んでいるようにも見えます。

一連の取材を通じ、
豊かな恵みをもたらす海と
取材者として
しっかり向き合いながら、
そこに生きる人々のリアルな姿を
これからも記録していきたいと
改めて感じています。

 

 

 

 

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

中武正和をフォローする
オピニオン室