ウクライナ戦争を通して考える国内外の領土問題

オピニオン室

ロシアによるウクライナ侵攻は、
6月下旬、大きな局面を迎えました。
ロシアでは一時、自国の領土において、
内戦の危機に直面。
事態は混迷の度を深めています。

ロシアで今、何が?

ロシアの民間軍事会社ワグネルの
創設者・プリゴジン氏は、6月下旬、
ロシア国内で武装反乱を起こしました。

しかし、その後、プリゴジン氏は、
首都モスクワへの進軍停止を表明し、
ワグネル部隊とロシア軍の衝突は
回避される見通しとなりました。
(日本時間25日午前10時現在)

プリゴジン氏は、通信アプリへの投稿で
「ロシア人の血が流れることに対する
責任を自覚し、部隊を
方向転換させている」としました。

ウクライナ侵攻に加担したものの、
最近はウクライナ侵攻について
ロシアが標榜する、いわゆる
特別軍事作戦そのものを
疑問視する発言などで、
プーチン政権を批判していたプリゴジン氏。
ロシア領土での内戦という
大きな危機は回避されたと見られますが、
今回の事態がプーチン政権、
そしてウクライナ侵攻にもたらす影響が
注目されています。

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領土奪還目指すウクライナ

去年2月のロシアによる侵攻以降、
ウクライナのゼレンスキー大統領は、
侵攻より前にロシアが一方的に併合した
クリミアについても、
領土を奪還する考えを表明しています。

東部ではウクライナによる
反転攻勢も始まっています。

こうしたゼレンスキー大統領の姿勢からは、
領土への強いこだわりが読み取れます。

振り返って、日本では、今、
領土にどのような課題があるのでしょう。

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日本の領土 その課題は

※以下、日本政府の公式見解に基づきます。

日本の領土である北方領土ではロシアが、
竹島では韓国が不法占拠を続けています。
領土問題が存在

また、尖閣諸島は、
他国による不法占拠は無いものの、
中国と台湾が領有を主張しています。
→解決すべき領土問題は存在せず

愛媛県美術館では、
これら領土と主権をめぐる問題について
理解を深めてもらおうと、
政府主催のパネル展が開かれています。
(7月2日まで)

このうち北方領土は、
択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島からなり、
かつて日本人1万7千人が暮らしていました。

会場では、
日本人の生活の様子を写した
戦前の写真のほか、1945年、
当時のソ連が中立条約に違反して
日本に攻め入り、現在もロシアによる
不法占拠が続いていることなどが
パネルで紹介されています。

また、島根県隠岐の島町に属している
竹島のコーナーでは、
1930年代に日本人が
アシカ猟を行っていた写真が
展示されています。

その後竹島は、1952年に
韓国が一方的に領有権を主張し、
それ以降、韓国による
不法占拠が続いています。

一方、沖縄県石垣市に属する
尖閣諸島のコーナーでは、
1900年代初頭に日本が建設した
カツオ節工場などの写真が展示されています。

尖閣諸島では、他国による占拠は無いものの、
1960年代、海底に石油が
埋蔵されているとの可能性が指摘されると、
その後、中国と台湾が領有権の主張を始め、
近年は中国による
領海侵入などが繰り返し発生しています。

スクランブル発進は南西方面に集中

こちらは、防衛省がまとめた
昨年度の緊急発進、
スクランブルの回数をまとめたデータです。
(スクランブル=日本の防空識別圏に接近する
 国籍不明機に対し、航空自衛隊が
 戦闘機を発進させる対領空侵犯措置)

これによりますと、
スクランブル発進の回数は
778回で、中国機に対しては
全体の74パーセントにあたる
575回にのぼっています。

「2022年度(令和4年度)緊急発進実施状況について」
(統合幕僚監部)を加工して作成
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2023/p20230418_02.pdf

中国機へのスクランブルは、
中国が領有権を主張する
尖閣諸島周辺が多く含まれています。

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平和的解決を目指す日本

政府は「日本は、憲法によって、
国際紛争を解決する手段として
戦争や武力の行使に訴えることは
認められていません」としています。

当然ですが、北方領土や竹島を
武力で取り戻すような方法はとらず、
あくまで国際法にのっとり、
冷静かつ平和的に解決する考えを
示しています。

加えて、北方領土については
平和条約交渉の進展のため、
その環境整備として
日露交流などを続けています。

一方、尖閣諸島周辺では、
中国船舶による領海侵入や
中国機へのスクランブルが続いています。

この問題で中国側が、
日本とは異なる認識を持つ中、
双方の間で偶発的な衝突を
招くことのないよう、
引き続き冷静な対応が求められています。

パネル展を主催する
内閣官房 領土・主権対策企画調整室では
「展示を通じて、領土や主権について
若い人にも
関心を持ってほしい」としています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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