開戦から1年 ウクライナ柔道選手が愛媛で合宿

オピニオン室

今月24日で
ロシアのウクライナ侵攻から
1年を迎えます。

先月、
ウクライナ出身の2人の男性が
愛媛で柔道の猛特訓に励みました。

※詳しくは動画で!

2人は
ボロディミール グチュコフさん
(愛称ボル・23歳)と、


ブラディフラブ クラソフスキーさん
(愛称ビラディ・21歳)。

ウクライナで柔道は
サッカーに次いで
人気が2番に高いスポーツなんだそうです。

2人は6歳からけいこに励んでいました。

しかし、学生生活を送りながら
柔道を続けていた去年夏、
し烈さを増す戦争に危険を感じ、
2人はカンボジアへ避難。

現地の大学に通いながら
同国の柔道代表チームのメンバーとして
愛媛での強化合宿に参加したのです。

津島町出身の柔道家が熱血指導

2人を指導したのは
宇和島市津島町出身の柔道家で、
現役時代に4度の国内制覇を果たし、
その後、愛媛の中高生や
オリンピック選手を育成した
濱田初幸さん(67)です。

濱田さんは去年10月から
柔道カンボジア代表チームの
監督としてウクライナの2人を含む
代表選手たちを指導。

ことし5月に行われる国際大会での
金メダル獲得を目指し、
濱田さんが総師範を務める
松山市の常盤同郷会柔道部での
強化合宿が開かれたのです。

世界レベルの選手を育て上げた
“濱田流”の指導は、
早朝の特訓から始まります。

毎朝7時、松山市の神社で
階段を上り下りする
体力トレーニングが行われます。

そして道場で基礎的な技の稽古。

さらに、市内の高校に出向いての出稽古など。

英語を通じての
熱のこもった指導が印象的で、
ウクライナの2人は
必死に食らいついている様子でした。

■濱田初幸さん
「2人は柔道自体がアバウト過ぎて、
細かい技術がまだまだ未熟。
また、ウクライナから避難した彼らは
体力が欠けていて、
それをどこまで補えるかが大きな課題です」

厳しさの中にも平和を感じる時間

けいこ尽くしの日々でしたが、
息抜きの時間もあります。

この日は松前町の観光いちご園で
束の間の休息。

■ビラディさん
「イチゴはとても甘かったよ。
ふるさとのウクライナと比べて
日本は平和だと感じるよ」

ふとした瞬間に思い出すのは、
やはり家族、そして母国だといいます。

■ビラディさん
「毎日、故郷を思い出しているよ。
ウクライナが早く勝利するよう願っている。
なぜなら、これは意味のない戦争だし、
たくさんの人が亡くなっているんだ。
近い将来、日本のように
平和な社会が訪れるよう願っているよ」

道場では厳しい表情を崩さない濱田さん。

母国を離れ、柔道を続ける彼らに
特別な気持ちを抱いていました。

■インタ 濱田さん
「道場を離れて柔道着を脱いだ時に、
出来るだけ彼らの気持ちが
安らげるように寄り添いたい」

戦争が続いていることを忘れないで

ウクライナ出身の人たちを
愛媛で取材する機会は
これまでほとんど無く、
2人へのインタビューを通じて、
悲惨な戦争が1年近く続いている現実を
改めて認識する機会となりました。

2人は大学での授業が始まるため、
他の代表メンバーを残し
一足早くカンボジアへ帰国しましたが、
彼らが一日も早く母国・ウクライナで
柔道が出来るよう願わずにはいられません。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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